- 2024/07/17 掲載
アングル:程遠い中国の景気回復、GDPが裏付け 試される投資家の忍耐力
[ニューヨーク/シンガポール 16日 ロイター] - 中国の株式市場に資金を投じている世界の投資家にとって、直近の中国の経済指標は何の慰めにもならないばかりか、彼らが期待をかけている景気回復にはまだ時間がかかりそうだという現実を改めて突き付けた。
中国国家統計局が15日発表した第2・四半期(4─6月)国内総生産(GDP)は前年同期比4.7%増。政府目標の5%前後を下回っただけでなく、低迷する不動産セクターに改善の兆しが見られず、国内消費者はより悲観的で消費意欲がないことが示された。
年初来1%強の上昇にとどまる株式相場を押し上げるような、しっかりとした回復が実現するには、長い時間がかかるというシグナルだ。
資産運用会社レイリアント・グローバル・アドバイザーズのシニアマネジングディレクター、フィリップ・ウール氏は「中国に資金を投じている投資家は今、イライラしている」と語る。
レイリアントは、バリュー投資、つまり高い収益が期待できる割安株に投資する戦略に沿って選別的に中国株を買っている。ウール氏によれば、株価はいずれ上昇に転じるはずだが、その時期については見当もつかないという。
中国株式市場のベンチマーク、CSI300指数は2月に付けた数年来の安値水準から5月にはおよそ19%上昇した後、ここ1カ月は3400─3500のレンジで推移している。上海総合指数も5月に付けた8カ月ぶりの高値から6%以上下落している。
中国当局は今年、市場監督当局のトップが交代するなど、株式市場を下支えするため数々の支援策を打ち出した。潮目が変わりつつあるとの投資家の期待が高まり、株高につながったが長続きはしなかった。
中国の不安定な景気回復と長引く不動産危機は依然として足かせとなっており、欧州連合(EU)との貿易摩擦の高まりや米中対立の長期化といった地政学的な問題も、ますます逆風を強めている。
M&Gインベストメンツのマルチアセット投資ディレクター、マイケル・ダイアー氏は「問題は、回復には数年はかかることだ」と語る。
当局と中央銀行は正しい方向に向かっているように見えるが「世界が望むようなバズーカ砲は打ち出していない。地政学的な不確実性も残る」とし「確実性を待っていてもそれは得られないだろう」と述べた。
<確実な回復待ち>
半面、魅力的なバリュエーションと強力なファンダメンタルズを理由に、中国に資金を投じる動きは一部にあり、特に先端技術や製造業など、中国の新たな成長セクターに該当する企業への関心は強いという。
実際、中国株は割安だ。S&P総合500種指数の株価収益率(PER)は23倍、日経平均は22倍、インド株は23倍なのに対して、上海総合指数はその半分だ。
12カ月先の予想に基づく株価純資産倍率(PBR)は、中国株は0.95倍で、アジア太平洋地域の1.26倍を下回る。
ノース・オブ・サウス・キャピタルEMファンドのパートナー兼ポートフォリオマネジャー、カミル・ディミッチ氏は「バリュー投資家として、中国株の機会を無視することはできないが、中国が直面しているマクロリスクや政策リスクを考えると、熱狂的な見方を抑える必要がある」と言う。
同氏は中国市場全体をややアンダーウエートとしているが、バリュエーションが高かった数年前に比べると「それほど(アンダーウエート)ではない」という。
中国本土と香港の相互取引を通じた中国株への海外からの資金流入は、今年は現時点までで376億元(約51億8000万ドル)相当。2023年の流入額は437億元だった。
全体として、中国に対する悲観論のピークは過ぎたものの、ほとんどの投資家はより確実な回復を待って様子見をしているようだ。既に中国市場に参入している投資家は、忍耐力が試されている。
前述のレイリアントのウール氏は「回復が始まったと思うとそれが偽りだったとなるのは苦痛でストレスだが、私は中国の長期アクティブ投資家として、もう慣れっこになっている」と語った。
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