- 2024/06/26 掲載
焦点:シンガポール港、紅海攻撃の余波で大混雑 海上運賃も高騰
[ソウル/シンガポール 26日 ロイター] - シンガポールのコンテナ港の混雑が、新型コロナウイルスのパンデミック以来最悪となっている。紅海での攻撃を回避するための船舶のルート変更が長期化し、世界の海上輸送が混乱している。
小売企業や製造業その他産業は現在、運賃高騰や寄港地の確保、コンテナ不足と再び格闘している。折しも多くの消費者向け企業は、早くも年末商戦を見据えて在庫積み増しを図ろうとしている。
海事データ会社ライナーリティカの今月の発表によると、世界の港湾の混雑は1年半ぶりの高水準に達しており、停泊待ちの船舶の60%がアジアに位置している。6月中旬時点で停泊待機している船舶は総容量240万TEU(20フィートコンテナ換算)以上だ。
しかし混雑の原因は、パンデミック時のような消費者の買いだめではなく、船舶のルート変更にある。11月以来、イエメンの親イラン武装組織フーシ派が船舶を攻撃している紅海を避け、船舶はアフリカ大陸周辺をぐるりと回る長距離航行ルートを通り、結果として航行日程は混乱して寄港地は減っている。
そのため船舶はシンガポールのような大きな積み替えハブで一度に大量の貨物を積み下ろし、最終寄港地への航行に向けて別の船に積み替えることになる。
シンガポールを拠点とするコンサルタント会社、ドゥルワリー・マリティム・アドバイザーズの副代表、ジェイエンドュ・クリシュナ氏によると、シンガポールの平均荷揚げ量は1月から5月にかけて22%急増し、港湾の生産性に大きな影響を与えている。
<深刻な渋滞>
世界第2位のコンテナ港であるシンガポールはここ数週間、特に深刻な混雑に見舞われている。
シンガポールの海事港湾局(MPA)が5月末に発表したところでは、コンテナ船の接岸までの平均待ち時間は2─3日。ライナーリティカなどによると、最長1週間に及ぶ場合もある。通常、接岸にかかる時間は1日に満たない。
一部の船舶はシンガポールでの接岸を断念しているため、近隣の港がバックアップに回ることもある。
ライナーリティカによると、マレーシアのクラン港とタンジュンペラパス港に負担がかかっており、上海など中国の港でも待機時間が長期化している。
ドゥルワリーは、積み替え港は今後も非常に混雑した状態が続くと予想。ただ、海運会社が輸送容量を増やし、運航スケジュールを建て直すのに伴って、混雑はいくらか緩和されるとの見通しを示した。
<ピークシーズン前倒し>
海運会社や調査会社によると、今年は海運のピークシーズンも予想より早く到来し、混雑に拍車を掛けている。
運輸会社DHL・グローバル・フォワーディング・アジア・パシフィックのニキ・フランク最高経営責任者(CEO)の話では、米国を筆頭とする在庫復元の動き、そして需要増を見越した顧客企業による出荷前倒しによってピークシーズンが早まっているようだ。
一方、コンテナ運賃は急騰しており、インフレを再燃させるリスクが高まっている。
アジアに特化した貨物輸送会社ディメルコの説明では、運賃は4月まで安定していたが、5月には「中国の電子商取引、電気自動車(EV)、再生可能エネルギー関連商品の海上輸出が大幅に増加した」という。その結果、「例年6月から始まるピークシーズンがまるまる1カ月前倒しされ、海上運賃の高騰を引き起こした」という。
データ会社デカルトによると、5月には米国10大海港におけるコンテナ輸入量が12%増加した。
全米小売業協会のジョナサン・ゴールド副会長は、「(米国の)消費者は昨年を上回る支出を続けており、小売業者は需要を満たすために在庫を積み上げている」と述べた。
アジアから欧州への海運による輸入にもピークシーズン入りの兆候が見られる。アジアから米国および欧州へのコンテナ運賃は、年初の3倍に高騰した。
貨物プラットフォーム、ゼネタによると、シンガポールを含むアジアから米東海岸への運賃は2022年9月以来の高水準、西海岸への運賃は22年8月以来の高水準に達している。
一部の業界関係者は、中国港湾のボトルネックの一因として、米国の輸入業者が8月1日から関税が大幅に引き上げられる鉄鋼や医療品などの中国製品を駆け込み購入していることを挙げる。
ただ、ジャレッド・バーンスタイン経済諮問委員会(CEA)委員長の分析に基づけば、新たな関税は中国から米国への輸入品の約4%にしか影響しない。ロサンゼルス港幹部も、影響は限定的だと予想している。
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