- 2024/06/14 掲載
アングル:アラムコ株売却でサウジは海外資金確保、持続可能性には疑問の声
[ドバイ 11日 ロイター] - 野心的な経済変革のための資金を必要とするサウジアラビアは対内投資の目標達成に何年も苦戦してきた。だが国有石油会社サウジアラムコ株の追加売り出しは1年以上前から準備したかいがあり、112億ドルの半分強を外国人投資家が購入した。
5年前の294億ドル規模の新規株式公開(IPO)が、企業統治や地政学、環境を巡るリスクへの懸念から海外投資家に敬遠されたのとは様変わりした。
それでもアラムコ株の買い手については疑問が残る。
テリマーの株式調査部門責任者ハスナイン・マリク氏は「外国人投資家の割り当てが多いため、株式売り出しは成功したように見える」とした上で、「新たな大口機関投資家がいるのかや、長期保有者かどうか、最初の機会に持ち株を売却するつもりかなど、何も分からない」と指摘した。
関係筋は新たに100以上の投資家が株式を購入し、米英日香港の投資家も含まれていると明らかにした。アラムコが9日に開示した情報によると、公開株式のうち、海外機関投資家が約0.73%、国内機関投資家が約0.89%、個人投資家が約0.76%を保有。残りは政府が直接・間接的に保有している。
<金の卵を産むガチョウ>
サウジの債務残高の対国内総生産(GDP)比率は2015年末の5.7%から今年3月末には26.2%まで急上昇した。今のところ問題なく負債を増やし続けることができるとアナリストはみている。
しかしキャピタル・エコノミクスのジェームズ・スワンストン氏は、原油価格が下落し厳しい緊縮財政を実施せざるを得なくなった場合、サウジの債務発行能力は抑制される恐れがあると警告している。
サウジが財政黒字を計上したのは14年以降では22年だけだ。当時は北海ブレント価格が平均1バレル=100ドル前後で、アラムコは過去最高の1611億ドルの利益を計上した。
サウジは対内直接投資を30年までに1000億ドルに拡大するという目標を掲げるが、22年の328億ドルがピークで昨年は192億ドルにとどまった。目標の5分の1にも満たず、18年から3%足らずしか増加していない。
ライス大学ベイカー研究所の研究員ジム・クレーン氏は外国人投資家が直接投資に関心を示さなかったため、サウジ政府はアラムコ株という代替手段を通じて外部資金を調達することに成功したと述べた。その一方でこうした株式売却が長期的に持続可能かどうかについては疑問を呈した。
市場環境が許せばサウジはアラムコ株をさらに売却することは可能とアナリストはみている。
コプリー・ファンド・リサーチの創設者スティーブン・ホールデン氏は「全体的に見るとサウジは依然としてアクティブ新興国ファンドにとってアンダーウエートで広く保有されていない」と指摘。「オーバーウエートのファンドはわずか6.3%であることを踏まえると、アラムコへの投資はアクティブファンドにとって配分を増やす好機だろう」と述べた。
多角化戦略により非石油事業のGDPに対する寄与度は16年の46%強から3月末には51.3%に上昇した。だがアラムコの株式売却は、数十年にわたって繁栄を支えてきた金の卵を産むガチョウにサウジが依存し続けていることを浮き彫りにしている。
クレーン氏は「ある時点でサウジ政府が制度的な評価を改善し、外国人が安心して資金を投じられるようになることを望んでいる」と語った。
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