• 2024/06/07 掲載

焦点:ECBの早期追加利下げに市場は懐疑的、株価には支援材料

ロイター

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Yoruk Bahceli Naomi Rovnick

[ロンドン 6日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は6日の理事会で約4年9カ月ぶりに主要政策金利の1つ、中銀預金金利を引き下げた。過去最高水準4.00%から3.75%への利下げだが、インフレ率予想が上方修正され、クリスティーヌ・ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、金融引き締め策が縮小局面に入ったとは認めなかった。

これを受けて市場では、年内に追加利下げを2回行い、利下げペースは他の先進国中銀よりも速くなるとの従来の観測が後退した。

追加利下げ予想幅は0.36%にとどまり、年内の計3回目利下げの可能性は50%未満に低下した。また、9月までに2回目の利下げを決めるとの可能性も理事会前は約80%だったものの、70%未満に下がった。

4月の前回理事会決定後の市場では、年内の計3回利下げ予想がかなり優勢だった。ただ、6月の理事会直前では60%超の水準に落ち着いていた。

ピクテ・アセット・マネジメントのサブリナ・カニシェ氏は今回のラガルド総裁の記者会見について「今後の方向性に言及したがらなかった」と指摘。このため市場の追加利下げ予想は「利下げサイクルの先行きをもっと見通せていれば利下げ予想も強かっただろうが、不透明感が依然残っている」と話した。

<米国との景気格差>

ECBのタカ派スタンスを受け、市場では米国とユーロ圏の景気格差というテーマに一段と注目が集まっており、ECBの早期で速いピッチの追加利下げ予想が後退する一方で、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ転換の早期化観測は再燃している。

今年初めの段階では、米景気がユーロ圏よりも好調だったため、債券はユーロ圏発行のものが選好され、外国為替市場ではユーロ相場が対ドルで下落した。

しかし、経済成長率はユーロ圏が第1・四半期(1―3月)に予想を超えて堅調で、前年後半の景気後退から回復した。対照的に米国の第1・四半期の成長率は前年第4・四半期の半分以下にとどまった。

このため市場参加者は、ECBの追加利下げ見通しに確信を持てなくなっている半面、FRBの緩和転換への見方を強め、年内の利下げ予想幅は1週間前の0.35%ポイントから約0.50%ポイントへと拡大し、年内計2回の利下げを念頭に置き始めた形だ。

ヘッジファンド「ポイント72」の欧州経済調査責任者、ソレン・ラッデ氏は「米景気が多少改善し、しかもFRBが9月に利下げを押し進められれば、ECBには(追加利下げに踏み切れる)救いになるかもしれない」と話した。

<債券市場もFRB次第>

市場では以前、ECBが年内に積極的に利下げを重ねると見方が広まっていたが、足元では、FRBが利下げ転換しなければECBの早期の追加利下げは見込みづらい地合いに転じている。

これはユーロ圏国債への投資損益(パフォーマンス)が引き続き米国債に劣ることを意味する。5月のユーロ圏国債は0.2%の損失だった。損失は1月以来、3カ月ぶりだった。一方、米国債は同月、1.5%の利益を確保した。年初来で比べると、ユーロ圏国債は1.2%の損失。米国債の0.6%損失の2倍に及んだ。

利回りの低下(価格は上昇)で見ると、ユーロ圏国債の指標であるドイツ10年物国債利回りは6月に入って以降、10ベーシスポイント(bp)低下したが、米10年債は倍の20bpも低下した。

コロンビア・スレッドニードルのEMEA(欧州・中東・アフリカ)債券部門を率いるローマン・ガイザー氏はユーロ圏の政府債の今後の上昇を予想していないと話す。

<ユーロと欧州株に支援材料>

ECBの追加利下げ観測後退はユーロ相場には支援材料だ。理事会が開かれた6日は一時1ユーロ=1.0883ドルに上昇した。これは4月中旬に付けた5カ月ぶりの安値水準から約2%高い水準だ。

JPモルガン・プライベート・バンクのグローバルFXストラテジスト、サミュエル・ジーフ氏によると、ユーロのフェアバリューは1.10ドル程度。この場合、まだ約1%の上鞘が残っていることになる。

株式運用パフォーマンスで見れば、欧州株のパフォーマンスは米国株に劣っている。とは言え、ユーロ圏景気の改善はSTOXX欧州600種に追い風で6日に取引時間中として過去最高値を更新した。今後も上値余地が見込まれている。

欧州の資産運用会社カルミニャックの投資委員会メンバー、ケビン・トゼット氏は、ユーロ圏景気が投資環境として最適な「スイートスポット」にあると話す。同社が世界の株式に投資するファンドの中で、主要オーバーウエートな銘柄群は欧州株という。

ポイント72のラッデ氏は、米景気が軟着陸(ソフトランディング)に向かっていなければ、今回の理事会後の市場で追加利下げ予想が一段と後退すると予想していたという。

同氏は「ラガルド総裁は6日の利下げに当たって政策判断ミスをしていないと主張するのに躍起だった」と話す。そうした総裁の説明があると、市場関係者の間で金利見通しに大幅な変更が起きたはずだが「そうはならなかったのは、ユーロ圏外部の状況が強く市場に影響を及ぼしているからだ」と分析した。

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