- 2024/05/30 掲載
アングル:中国企業、株主還元に奔走 「日本型」改革の呼びかけに対応
[上海/香港 30日 ロイター] - 中国の証券当局が、日本や韓国を手本として企業に株主リターンの向上を呼びかけたことから、中国上場企業は自社株買いや増配といった株主還元策に奔走している。これは株価上昇につながり歓迎されている一方で、本格的な企業統治(ガバナンス)改革につながる可能性は小さいとみられている。
公式データによると、中国上場企業の総利益は2023年に減少したが、配当総額は2兆2000億元(3000億ドル)と過去最高を記録した。100余りの企業が初めて配当を実施した。
厳格化された規制に基づいて上場廃止その他の罰則を科されるのを避けようと、自社株買い計画を発表する企業も増えている。
株主リターンの向上を目的に、3月に発表された一連の措置は、しっかりとした株価の反発を引き起こした。CSI300指数は2月に付けた5年ぶりの安値から約17%上昇している。
この状況は、東京証券取引所による資本効率改善の取り組みを背景に、日経平均株価が過去最高値を更新したことにもなぞらえられる。ただ中国の改革は、企業統治改革よりも相場の浮揚に重点が置かれているため、投資家の間では、日本型の相場上昇は起こりにくいとの見方が強い。
中国および香港の株式市場では、中国共産党が厳格に管理する国有企業が時価総額の約30%を占めており、民間株主との間で利益相反の問題が起こりかねない。
これに対し、日本では改革の一環として企業が株式持ち合いを解消し始めている。
Tongheng Investmentのファンドマネジャー、ヤン・ティンウー氏は、株主還元は「増配と自社株買いの拡大を求めていた」株主に歓迎されたと説明。ただ、「企業統治に関して言えば、中国企業は非常に遅れている」と付け加えた。
<ムチに対応>
中国当局の呼びかけにより、多くの企業は配当実施を余儀なくされた。
レイリアント・グローバル・アドバイザーズのジェイソン・スー会長兼最高投資責任者は、日本企業は当局の「ムチ」にしっかり対応しており、中国でも同様の戦略が功を奏したと言う。
例えば高速道路運営の吉林高速公路と、鉄鋼製品の開発・製造会社、方大特鋼科技(ファンダー・スペシャル・スティール・ テクノロジー)は配当を予定していなかったが、上海証券取引所から疑問を呈された後、株主還元計画を見直した。
ただ、社会的責任を担っている国有企業が株主リターンを増やそうとすると、しばしば利益相反が起こる。また、日本の株価反発は外国からの資金流入に支えられたが、中国は依然として地政学的な逆風に直面しており、グローバル投資家は投資をためらっている。
アビバ・インベスターズ(ロンドン)のマルチアセット・ファンド責任者、スニル・クリシュナン氏は「中国企業にとって、西側の少数株主は最優先事項ではない。これは単純な構造上の要因であり、西側の投資家はそれを理解して受け入れなければならない」と語った。
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