- 2024/05/24 掲載
アングル:長期金利1%、行き過ぎか通過点か 日銀のQT警戒続く
[東京 23日 ロイター] - 日本国債市場では日銀の金融政策正常化に向けたタカ派トーンをにらみ、長期金利の指標となる新発10年債利回りが11年ぶりに1%の大台に乗せた。内外の投資家が国債売りのポジションを取る動きを進めてきたためだが、ここからの展開を巡っては見方が割れている。
もっとも、日銀の国債買い入れ減額による量的引き締め(QT)を巡る不透明感がぬぐえない中、6月の金融政策決定会合までは1%近辺で高止まりすると見込む向きが多い。
<海外勢と国内勢、珍しく見解一致>
投資家向けコンファレンスのため来日した米モルガン・スタンレーのマクロ戦略のグローバル責任者、マシュー・ホーンバック氏は「金利関連では『日本のデュレーションのアンダーウェイト(長期国債ショート)』が、グローバルポートフォリオの中でも確信度の高い人気のポジションだとの実感を持っている」と話す。
過去に外国人による円債ショートのトレードが人気だった時と違って、今回は海外勢と日本勢のビューが一致しているのが特徴で、経験上極めて珍しいことだと指摘した。
実際、国内運用会社からも「金利上昇を見込んだポジションをとっている」(債券ファンドマネージャー)との声が聞かれる。
<長期金利1%の評価>
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「フェアバリューからは行き過ぎ」との見方を示す。昨年10月に米10年金利が5%をつけた時の日本の10年金利は0.9%台後半だったと振り返り、「今回は米金利が4.4%台と50ベーシスポイント(bp)ほど低い時に日本の10年金利が1%ということでオーバーシュートだと思うが、勢いがついてしまっている」と指摘した。
モルガン・スタンレーMUFG証券の債券戦略部エグゼクティブディレクター、杉崎弘一氏は「フロントエンドの金利に比べて長期・超長期金利の上昇がより大きい。これは足もとの金利上昇の主因が利上げ期待ではなくタームプレミアム、つまり日銀の買い入れ減額による需給懸念であると示唆している」と話す。
日銀が13日の定例の国債買いオペ(公開市場操作)で市場の予想外にオファーを減額したことをきっかけに、債券投資家の間では量的引き締めを巡る警戒感が高まった。
市場では6月13─14日開催の日銀金融政策決定会合について、政策金利の引き上げを見込む向きは少ないものの、買い入れ減額の方針を示すのではないかと予想する声が多い。
杉崎氏は「6月の決定会合までは長期金利に上昇圧力がかかりやすいが、会合で買い入れ減額の方針が明らかになれば、(不透明感が払しょくされ)投資家の買いも戻ってくるのではないか」と述べ、10年金利は年末時点で1%、25年6月末は1.1%と予想。ここからの上昇余地は極めて限定的とみている。
<26年末に2%への上昇予想も>
一方、米ゴールドマン・サックスは17日、日銀が持続的な利上げサイクルに入ったとして今年10月を皮切りに27年までに1.25─1.50%への追加利上げを行うとの予想に基づき、日本の金利見通しを上方修正した。それによると、10年金利は年末に1.25%、25年末に1.8%、26年末には2%へと緩やかな上昇基調をたどると見込んでおり、1%は通過点とみている。
三井住友TAMの稲留氏は、現在はQTを巡る市場参加者の疑心暗鬼が、日銀が大量に国債を保有することで金利を押し下げる「ストック効果」を上回ってしまっている状態だと指摘。「日銀が6月の会合でたとえ買い入れの減額を決めたとしても、今広がっている減額を巡る不透明感さえクリアになれば、割安さに着目した買いもそれなりに入る」として、10年金利は0.9%を下回る水準まで低下すると予想した。
いずれにせよ、長期金利は少なくとも向こう3週間は1%近辺で高止まりする展開を想定する参加者が多いようだ。
(植竹知子 編集:橋本浩)
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