- 2024/05/21 掲載
正のインフレ率での賃金・物価上昇、政策余地広がる=日銀討論資料
Takahiko Wada
[東京 21日 ロイター] - 日銀は21日、同日開催した金融政策の多角的レビューのワークショップで用いた資料を公表した。金融政策のセッションでは、正の一般物価インフレ率が望ましいとの研究が増えつつあると指摘。インフレ率がプラス圏で推移するもとで賃金・物価が緩やかに上昇する世界では、金利が下限制約に直面するリスクが低下して「金融政策の対応余地が拡大する」とした。
ワークショップは、過去25年間の日本の経済・物価情勢、非伝統的金融政策とインフレ予想、パネルディスカッションの3部構成で行い、日銀の職員と民間研究者が議論した。
日本経済は1990年代後半以降のデフレ期にゼロ金利制約に直面。金融政策の対応余地が限られる中、日銀は低金利の長期継続を約束するフォワードガイダンスやマイナス金利政策など様々な手法を導入してきた。
日銀は近年の研究を紹介し、プラスのインフレ率を維持することで賃金や価格が他社の動向を見ながら変動しやすくなり、資源配分の効率化につながる可能性があること、ひいては、生産性に対して好影響をもたらしうるとした。
一方で、インフレ予想の変化が物価変動に及ぼした影響は大きかったと指摘。2013年の物価安定目標や量的質的金融緩和(QQE)の導入には「インフレ率を直ちに2%にアンカーするほどの有効性はなかった」ものの、1998年以降のデフレマインドが物価を持続的に押し下げる状況を転換させたという点で「一定の効果があったことが示唆される」とした。
調査統計局による過去25年間にわたる経済・物価情勢をテーマとするセッションでは、現在の物価上昇局面の出発点に海外発の供給ショックがあるとした上で、名目賃金について、従来は海外ショックの影響は小さかったが、現局面では大きく押し上げに寄与しているとの分析を示した。
その上で、人口動態や労働市場の構造変化、さらには金融緩和の持続で賃金が上昇しやすい状況になり、賃金や物価が上がりにくいというノルム(慣行)も解消に向かうとした。
金融政策の多角的レビューのワークショップは今回が2回目。議論はメディア非公開で行われたが、今後、概要を公表する予定。
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