- 2024/02/10 掲載
初の月面着陸、日本企業が結集=SLIMに続け、宇宙開発弾み
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型無人探査機「SLIM(スリム)」が日本初の月面着陸、それも誤差100メートル以内のピンポイント着陸に成功した。SLIMの機体などの開発には電機大手から玩具メーカーまで日本企業が結集。国内ではロケットや探査機の打ち上げが続々と予定されており、宇宙ビジネス飛躍へ期待が高まる。
SLIM全体の設計や製造を担ったのは三菱電機だ。高精度の着陸に不可欠なカメラやレーダーなどから構成される「航法誘導制御系」もJAXAの協力を受けながら同社で開発。急降下しながら自らの位置や目的地までの距離を推定し、姿勢を修正するという難しい動きを支えた。
宇宙事業を担当する佐藤智典常務執行役は「各工程の中で最も難しいのが着陸。完璧とは言えないが成功してほっとしている」と顔をほころばせた。
徹底的に軽量化を追求した機体に搭載された薄膜太陽電池はシャープが手掛けた。薄いフィルムで太陽電池セルを包んだ構造で軽量化を実現。着陸直後は機体が計画とは違う姿勢だったため発電できなかったが、その後正常に稼働し月面観測を助けた。
SLIMから投下された小型探査ロボットは玩具メーカーのタカラトミーなど4社が共同開発。タカラトミーが変形ロボットなどのおもちゃ開発で培った技術が応用された。走行や撮影などの動作制御はソニーグループの市販の機器が使われており、ソニーは「多額の投資が必要とのイメージがある宇宙開発の中で汎用(はんよう)品の活用はユニークだ」(広報)と話す。
今年はロケットなどの打ち上げが相次ぐ。SLIMを宇宙に運んだH2AロケットをJAXAと開発した三菱重工業は、15日に後継機の試験機打ち上げを予定。宇宙事業会社スペースワン(東京)は3月、和歌山県で初号機を打ち上げる。宇宙開発ベンチャーのispace(アイスペース)も年内に月面探査機を積んだ着陸船の打ち上げを目指す。
政府は民間企業や研究者の支援に向け、10年間で総額1兆円を拠出する計画だ。
【時事通信社】 〔写真説明〕小型月面探査ロボット「LEV―2」(愛称SORA―Q)が撮影した月面着陸後の探査機「SLIM」(JAXA、タカラトミー、ソニーグループ、同志社大提供) 〔写真説明〕シャープが開発し、月面着陸に成功した小型無人探査機「SLIM(スリム)」に搭載された太陽電池(同社提供)
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