- 2024/01/26 掲載
焦点:米投資家、トランプ対バイデン見越し影響分析
[ニューヨーク 24日 ロイター] - 米大統領選は23日の東部ニューハンプシャー州の共和党予備選でトランプ前大統領が勝利し、11月の本選で共和党候補のトランプ氏と民主党候補のバイデン大統領が再対決する公算が一段と大きくなった。そのため大統領選後の金融市場の動きを予想しようと、早々に頭を巡らせている投資家もいる。
ただし本選の結果に対する株式、債券、為替の反応を考える際には注意深い態度で臨む必要がある。何よりもまだ年が明けたばかりで本選までかなり間があり、市場で勝敗予想が真っ二つに割れているからだ。またほとんどの投資家は、長い目で見れば結局、連邦準備理事会(FRB)の政策や景気サイクル、企業業績など大統領選以外の要因の方が市場にとって重要だと見ている。
とはいえ、ストラテジストの間では11月の投票前後に政治的な要因で資産価格が動くことへの期待が高まっており、ゴールドマン・サックスは大統領選が「重要な市場イベント」になるだろうと指摘した。
ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのシニア・グローバル・マーケット・ストラテジスト、サミール・サマナ氏は、バイデン氏とトランプ氏のどちらかが2期目を迎えた場合、トランプ氏は減税、バイデン氏は環境対策など、1期目で重視した課題に一段と注力する可能性があると見ている。「両者はいずれも自分の理念や目標がそれほど変化していない。どちらかといえば、より強く自分の政策に傾倒しているかもしれない」と言う。
今のところ市場は堅調だ。2年間にわたり乱高下したS&P500種総合指数は史上最高値を更新。FRBが年内に利下げに踏み切るとの期待や、景気が底堅く推移していることが背景にある。昨年16年ぶりの高水準を付けた米国債利回りは、利下げ期待によって一転低下した。
<税制に注目>
トランプ氏が勝利し、2017年に打ち出した大型減税を恒久化することに成功した場合、株式市場は幅広く上昇しそうだ。しかし中国との貿易紛争が再燃するのではないかとの懸念が、減税によるプラスの効果を一部打ち消すかもしれないと、TDセキュリティーズのアナリストチームはノートで書いている。トランプ氏は米製造業を強化するとして、輸入関税の一律10%引き上げを提案している。
また、減税は財政赤字拡大への懸念をかき立て、投資家が長期債を保有する際のタームプレミアム(期間のリスクに伴う上乗せ金利)が上昇し、国債価格を圧迫する可能性があると、TDセキュリティーズは指摘した。
格付け会社フィッチは昨年夏、今後数年間に予想される財政悪化などを理由に、米国債の格付けを最上位から引き下げた。
TDのアナリストによると、バイデン氏が勝利すれば法人税の引き上げに動き、それは株価にとってマイナスかもしれない。いずれの候補者もどの程度政策を推進できるかは、議会上下両院の主導権をどちらの政党が握るかに大きく左右されそうだという。
ベーカー・アベニュー・ウェルス・マネジメントのチーフストラテジスト、キング・リップ氏は、再生可能エネルギー関連など金利上昇が重しになっている企業の株価は、バイデン氏が再選されれば追い風を受けると予想。バイデン氏はクリーンエネルギーへの取り組みを後押しすると予想されるためで、「金利が低下し、こうしたプロジェクトに対する政府の支出が高水準に維持されれば、バイデン氏の2期目にクリーンエネルギー産業はかなり好調になると思う」と述べた。
一方、米運用会社ニューバーガー・バーマンのアナリストチームは、共和党が政権を奪取すればインフレ抑制法(IRA)の一環として薬価抑制が実施される可能性が低くなり、大手製薬銘柄に「リリーフラリー(安心感による相場上昇)」が起こりそうだと予想。「国内に特化したヘルスケアサービス・セクターは、トランプ政権の通商政策からの避難所になるのではないか」と、ニューバーガーの株式担当最高投資責任者、ジョセフ・アマート氏は指摘した。
トランプ氏関連銘柄には既に大きく値が動いたものもある。フロリダ州知事のロン・デサンティス氏が大統領選から撤退を表明したことで、トランプ氏のソーシャルメディア・プラットフォームを上場させる際に受け皿となる予定の特別買収目的会社(SPAC)、デジタル・ワールド・アクイジションは22日に株価が急騰した。その後は上昇幅が縮小している。
外国為替市場についてはゴールドマン・サックスのストラテジストチームが、トランプ氏の勝利でドルが上昇する可能性があると指摘した。ゴールドマンは、15日のアイオワ州党員集会で同氏が勝利した後のドル高局面を精査。分析結果は「トランプ氏が大統領に就任した場合、同氏の通商と外交に関する政策は最終的にドルをさらに5%ないし10%押し上げそうだということを示唆している」と22日のレポートに書いている。
しかしいずれにせよストラテジストは、選挙日がまだ遠いため、市場はゆっくりと選挙結果を織り込んでいくだろうと警告している。
ウェルズ・ファーゴのサマナ氏は「過去数回の大統領選は最後まで結果が分からなかった。どちらかが圧勝しそうな情勢にならない限り、市場がどちらかに大きく肩入れすることはないだろう」とくぎを刺した。
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