- 2024/01/26 掲載
焦点:ECB4月利下げ観測強まる、物価先行き懸念後退と市場が受け止め
[ロンドン 25日 ロイター] - 25日の金融市場で、欧州中央銀行(ECB)が4月に利下げを開始するとの観測が強まった。この日のECB理事会で、政策担当者が物価の先行きに対してより安心感を得ていると受け止められたからだ。
ECBは政策金利を4%に据え置くとともに、ラガルド総裁は会見で利下げを議論するのは「時期尚早だ」と2回繰り返した。
しかしECBの物価や賃金への言及からは、以前ほどインフレを懸念していない様子にも見受けられた。例えば今回の声明では、「ユーロ圏域内の物価圧力は、主に単位労働コストの強い伸びによってなお高止まりしている」との表現が削除されており、ECBが賃金上昇ペースが減速するとの自信を深めつつある証拠だ、と市場はみなしている。これまでECBは、賃金上昇こそがインフレにとって最大のリスクだと警告してきた。
ユーロ圏国債市場では、ECBの早期利下げ期待の広がりを受け、金融政策の動きに敏感な2年債利回りが急低下。4月に最初の25ベーシスポイント(bp)利下げが実施される確率の市場想定は、理事会前の約60%から80%強に切り上がった。
また市場が見込む年内の合計利下げ幅も130bp前後から140bpに拡大した。
ドイツ銀行のチーフアナリスト、ピエト・クリスチャンセン氏は「市場から読み取れる重要なメッセージは、4月(理事会)がライブミーティング(状況次第でどう転ぶか分からない会合)ということだ」と述べた。
クリスチャンセン氏は「市場の言い分に従えば、物価と賃金の伸びが落ち着けば、ECBは姿勢を転換して4月の利下げを示唆することになる」と説明し、国債利回り低下は市場の利下げ期待をECBがはっきり抑えようとしなかったことを反映していると付け加えた。
ドイツとイタリアの2年債利回りの低下幅は約10bpと、過去2週間弱で最大になった。
ただ昨年終盤から急激に下がってきた国債利回りが一段と低下する余地は乏しい、と複数の投資家は警告した。
ロンバー・オディエのマクロ責任者兼マルチ資産ポートフォリオマネジャー、フロリアン・イエルポ氏は「当面は利回り低下が十分な域に達していると考えている」と語り、同社としては債券の投資判断をアンダーウエート、株式をオーバーウエートにしていると明かした。株式はまだ金利低下が企業収益にもたらす追い風を織り込んでいないという。
ラガルド氏は、ECBの政策運営はあくまでデータ次第で、利下げは夏場になると示唆した先週の見解を踏襲した。
同氏は以前、十分な賃金データが入手できる時期について「春の終盤」を予想していると発言。ECBチーフエコノミストのフィリップ・レーン氏は、4月に出てくるデータを点検したいとの見解を示しており、そうすると利下げ開始は6月以降という話になる。
ABNアムロやドイツ銀は25日、いずれも利下げは6月という従来の見通しを維持。TSロンバードのグローバル・マクロ担当マネジングディレクター、ダリオ・パーキンス氏は「市場はここからかなり急速にディスインフレが進むと期待し、ECBは過去のデータに目を向けて(物価情勢は)まだ厳しい段階を抜け出せていないと話している」と認識のずれを指摘した。
<後手に回るリスク>
投資家の間には、利下げ開始が遅くなり過ぎると、勢いが弱まっているユーロ圏経済にとって金融環境が過度に引き締められ続ける危険が生じるとの警戒感もある。
ドイツ企業の1月の景況感は予想外に悪化し、同国が景気後退を脱出するのに苦戦を強いられていることがうかがえる。
ECBの今年のユーロ圏物価上昇率見通しは2.7%と、ロイターがまとめた市場予想の2.4%より高い。同時に経済成長率見通しも0.8%で、市場予想の0.5%を上回っている。
アムンディ・インベストメント・インスティテュートのグローバル債券戦略責任者バレンティン・アイヌーズ氏は「6月の利下げは手遅れのリスクを背負うことを意味する。なぜならユーロ圏の成長率は既に低迷し、物価上昇率は著しく鈍化しているからで、つまりECBは賃金に注目することで後手に回る(ビハインド・ザ・カーブ)危険を冒そうとしている」と述べた。
一部の銀行は、ECBが50bp幅の利下げを迫られる可能性に言及。シティバンクは今週、政策金利引き下げ時期が遅れるほど、過度の引き締めを埋め合わせるために一段の利下げが必要となり、50bp幅の利下げはあり得るし、2025年には政策金利が1.5%まで低下してもおかしくないと主張した。
アイヌーズ氏は「ユーロ圏では米国よりもディスインフレのスピードがずっと速いように見えるため、ECBの利下げがあまりに遅くなる恐れがあり、市場はそのリスクを完全には織り込んでいない」と分析している。
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