• 2024/01/12 掲載

アングル:AIが車の新たな「馬力」に、従来型メーカーが対応強化

ロイター

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Abhirup Roy Joseph White

[ラスベガス 10日 ロイター] - 人工知能(AI)が車の新たな「馬力」になる中、従来型の完成車メーカーは、米テスラや中国BYDなどの人気電気自動車(EV)に匹敵するデジタル機能搭載に向けた取り組みを強化している。

米ラスベガスで開催中の「テクノロジー見本市(CES)」で業界関係者やアナリストが明らかにした。

テスラがスマートフォンのように無線でソフトウエアを更新できるOTA技術を搭載した車を発売してから10年以上がたつが、従来型の完成車メーカーは、ソフトによって機能や特徴が決まるこうした「ソフトウエア定義車両(SDV)」の開発で依然後れを取っている。

自動車メーカーは少し前まで、乗用車・ピックアップトラックの馬力やけん引力をアピールしていたが、業界では目まぐるしい技術革新が進展しており、ソフトウエア機能の向上が消費者の心をとらえている。

SDVへの移行は一筋縄でいかない。車にはスマートフォンよりも高い耐久性と安全性が求められる。対話型AI「チャットGPT」など新たなAIシステムにはエラーがつきものだ。さらにAIは従来型の車の製品サイクルに比べ、はるかに急ピッチで変化する。

<ベータ版の提供>

IT企業は製品の正式リリース前にベータ版として試験ベースで消費者に技術を提供することが多いが、自動車業界では現時点でそうした手法は普及していない。

こうした中、メルセデス・ベンツ はチャットGPTを同社の車両に試験的に組み込む「ベータ・プログラム」を開始。ドライバーと車載インフォテインメントシステムの間の自然な対話をどのような形で改善できるか調べている。

CESでインタビューに応じた同社のソフトウエアチーフ、マグナス・オエストベルグ氏は「以前はベータ・プログラムの導入など考えたこともなかったが、大規模言語モデルが実際にどのような形で役立つか見極める必要がある」と指摘。従来よりもはるかに速いペースでソフトを開発し車両に搭載する必要があると述べた。

同氏は「当社はITインフラを変えており、製造ラインの更新をOTAで行えるよう製造ラインも実際に変更している。ディーラーの販売手法など、あらゆるものを変えている」と述べた。

ソフトウエア機能の強化には多額の投資が必要だが、必ずしも順調に進んでいるわけではない。

米ゼネラル・モーターズ(GM)は先月22日、発売したばかりの「シボレー・ブレイザーEV」の販売を停止した。顧客からソフトの不具合に関するクレームがあったことが原因だ。今月10日時点でもソフトの修正は行われていない。GMによると、ソフトの更新準備ができれば、車の所有者はディーラーに車を持っていくことになるという。

これに対し、テスラはOTA技術を採用しており、車の所有者が修理のためディーラーに出向く必要はない。

<険しい挑戦>

コンサルティング会社アリックスパートナーズのグローバル自動車プラクティス責任者マーク・ウェイクフィールド氏は、従来型の自動車メーカーにとって、テスラに匹敵するソフトウエアアーキテクチャーを開発するのは「険しい、険しい挑戦」だと指摘。

独フォルクスワーゲン(VW)は昨年末、EV向け技術を納期通りに開発できなかったソフトウエア部門カリアドの再編を発表。開発を急ぐため、IT業界で提携先を探している。

VWブランドの技術開発責任者、カイ・グルニッツ氏は、従来の自動車メーカーとソフトウエア会社では仕事の進め方が異なると指摘。「われわれも学ばなければならない」と述べた。

VWはCESで、チャットGPTを組み込んだ音声アシスタント技術を搭載した乗用車を年内に投入すると発表。

提携先の米ソフトウア会社セレンスのイクバル・アルシャド最高技術責任者(CTO)によると、同社は大手自動車メーカー10─15社と提携交渉中だ。

<激戦地は中国>

業界関係者やアナリストによると、VWやメルセデスなど従来型完成車メーカーの激戦地は、成長著しい中国のEV市場だ。

テスラ、BYDや、一部の中国の新興EVメーカーは、ゲーム、ビデオ会議など高度なインフォテインメント機能を搭載した車載ディスプレーを提供している。

中国の複数の自動車メーカーは今週のCESで、インテリジェント化が進む車の頭脳となる高性能半導体を米国のエヌビディアやインテルから調達する契約を発表した。

中国乗用車協会によると、昨年の中国市場ではBYDなど国内ブランドがシェアを拡大。海外勢のシェアは縮小した。

ホンダは巻き返しに向け、2022年にソニーグループとEV合弁会社ソニー・ホンダモビリティを設立。同社の水野泰秀・最高経営責任者(CEO)は、ホンダでもノウハウがないとし、合弁事業の重要性を強調した。

<課金の課題>

新たなソフトの開発と投入は従来型メーカーの課題だが、消費者から料金を徴収できるかは、また別の問題だ。

一部の自動車メーカーは、半自動運転などの機能に定額料金を課しているが、コンサルティング会社デロイトの調査では、ソフトウエア機能に追加料金を払うと答えた消費者は25%にとどまった。

現代自動車のホセ・ムニョス最高執行責任者(COO)はCESでロイターに対し、新たなソフトウエア機能で追加料金を課金できるのは「最大で3─5年」で、その後、そうした機能は陳腐化すると指摘。「顧客の要求度は常に極めて高い」と述べた。

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