- 2024/01/11 掲載
焦点:米地銀、24年の増益確保厳しいか 高い預金金利が足かせ
[ニューヨーク 8日 ロイター] - 米地銀は2024年の増益確保が厳しいと見込まれている。預金者に対して大手行よりも預金金利を高く設定するよう迫られる一方で融資需要は依然弱い。さらに、金利見通しが不透明な中で保有証券の含み損が新規融資や高利回り資産への投資の足かせになるとみられる。
ゴールドマン・サックスは地銀6行の純金利収入が今年、1桁台半ばの減少になると予想。同社の銀行アナリスト、リチャード・ラムズデン氏は「厳しさが増すだろう」と述べた。
フェデラルファンド(FF)金利先物市場では、連邦準備理事会(FRB)が3月に利下げを開始し、24年末までに政策金利(FF金利)を現行水準から約1.4%ポイント引き下げるとの見方を織り込んでいる。
それでも、フィッチ・レーティングスは金利が高止まりし、中堅・中小行が預金維持のために大手に比べて高い金利を支払うよう迫られると予想する。
フィッチの北米銀行格付け責任者であるクリストファー・ウルフ氏はこれが銀行の金利収入と金利マージンにとって「引き続き課題であり、足かせとなるだろう」と述べた。
米銀2位のバンク・オブ・アメリカが一般預金者に平均0.34%の金利を支払っているいるのに対し、ユタ州に本社を置くジオンズ・バンコープは、預金と有利子負債に約2.10%の金利を支払っている。
LSGEがまとめたアナリスト予想では、資産規模500億─1000億ドルの地銀11行の24年の1株利益は減少すると見込まれている。ジオンズのほか、ニューヨーク・コミュニティ・バンコープなどが含まれる。
このうち4行は純金利収入が減少し、その他はわずかに増える見通し。
昨年はシリコンバレー銀行を含む3つの地銀の破綻を受けて、中堅・中小行から大手行に預金が流出した。
JPモルガンでは昨年、当座預金口座の新規開設が差し引きで約200万口座に上った。バンク・オブ・アメリカは口座数が50万増え、新規口座が19四半期連続増となったとブライアン・モイニハン最高経営責任者(CEO)が投資家に明かしている。
一方、FRBが利下げに踏み切れば預金金利の引き上げ圧力が緩和され、大手行の純金利収入をさらに押し上げるとみられる。
米銀の第4・四半期決算は1月12日に始まる。
<格下げ>
格付け会社S&Pとムーディーズ・インベスターズ・サービスはここ数カ月の間に、米銀の格下げや見通し修正を相次ぎ発表した。資金調達リスクや収益低迷で銀行部門の信用力が試される局面になると予想している。
S&Pは8月に預金流出と金利上昇を理由にUMBファイナンシャルとコメリカ銀行の格付けを引き下げており、収益が頭打ちになっていることを理由にキーコープも格下げしている。
UMBは格下げに関連し、地銀が直面しているとされる圧力は顕在化しなかったと指摘し、流動性や規制資本水準、融資の質、資金の調達源は業界全体、とりわけUMBで引き続き強固だとした。
キーコープのクラーク・カヤット最高財務責任者(CFO)は、純金利マージンと純金利収入が年後半を中心に改善すると予想していると12月に述べていた。
銀行に融資・預金金利設定ソフトを提供するノミス・ソリューションズが推計した預金ベータ(FRBの金利動向に対する預金金利の感応度)は大手行で15─19%にとどまったのに対し、地銀やコミュニティー銀行では60%台前半となった。
先行きは不透明だが、オハイオ州を拠点とするハンティントン銀行は、融資の約60%が変動金利で、同業他社よりも自動車ローンや住宅ローンの金利を迅速に引き上げられるため、高金利の恩恵を受けてきた。
「金利が上がれば、私たちの資産の価格も上がる」とスティーブン・スタイナーCEOは語り、全ての銀行がそうであるわけではないとした。
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