• 2023/12/29 掲載

アングル:インド産ウイスキーが台頭、仏ペルノや英ディアジオも揺るがす

ロイター

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Arpan Chaturvedi Aditi Shah Aditya Kalra

[インドリ(インド) 17日 ロイター] - ニューデリー近郊の蒸留所には、かつてバーボンやワインの貯蔵に使われたオーク製の樽が積み上げられ、今は熟成中のウイスキーで満たされている。今年、世界最高のウイスキーに選ばれたインドのシングルモルト「インドリ」だ。ここでは1日1万本近くが製造されている。

蒸溜所の周りに広がるのは、スコッチ産地のような泥炭ではなく、サトウキビとマスタードの畑だ。インドリを所有するピカデリー蒸留所は増産に励むとともに、ウイスキー愛好家を誘致するために3ホールのゴルフコースを建設している。

インドはウイスキー愛好国だが、最近は消費国としてだけでなく生産国としても存在感を増しつつある。330億ドル(約4兆7000億円)規模のインド蒸留酒市場は今、国産シングルモルトによって姿を変えようとしている。

仏ペルノ・リカールの「グレンリベット」や、英ディアジオの「タリスカー」といった世界的老舗ブランドが、「インドリ」、「アムルット」、ラディコ・カイタン社の「ランプール」といったインド銘柄と商店のスペースを争う構図だ。

ビールが酒類販売の大半を占める多くのアジア諸国とは異なり、インドはウイスキー愛飲者が圧倒的に多い。世界的な賞の受賞や富裕層の増加に加え、コロナ禍のステイホーム中に多くの愛飲家が新しい銘柄を試し始めたことが相まって、インドのウイスキー事情を揺るがしている、と業界幹部やアナリストは言う。

弁護士のアディティヤ・プラカーシュ・ラオさんは長年、外国ブランドを愛飲してきたが、今では自分用や祝祭シーズンの贈答用にインド産モルトウイスキーを購入することが増えている。

インドのウイスキーには国民として誇りを感じるし、インド料理との相性も抜群だとラオさん。「スパイシーなインド料理との相性でインド産モルトに勝るものはない。大好きだ」と語る。

インドリの「ディワリ・コレクターズ・エディション」は8月、米サンフランシスコで開催されたウイスキー・オブ・ザ・ワールドのブラインドテイスティングで、スコットランドや米国の競合銘柄を抑えて最高賞の「ベスト・イン・ショー」を受賞した。このエディションの価格は421ドルだ。

こうした「インドを飲む」流れに乗ろうと、これまでスコットランドのシングルモルトに注力してきた世界的ブランドもインドのウイスキーに注目している。

ペルノは13日、ボリウッド・スターが登場しインド音楽が流れるイベントで、初のインド製シングルモルト、「ロンギチュード77」(48ドル)をお披露目した。ドバイ、そして世界へと販売を広げる計画だ。

ペルノ・インディアの最高マーケティング責任者、カルティク・モヒンドラ氏は「このカテゴリー(インド製ウイスキー)に非常に強気だ。空前の成長を遂げている」と語る。

<未来のカテゴリー>

ペルノと競合するディアジオは昨年、同社として初のインド製となるシングルモルト「ゴダワン」を発売し、米国を含む5つの海外市場で販売している。

ディアジオのインド最高イノベーション責任者、ビクラム・ダモダラン氏は「当社は、インドでのウイスキー販売からインド製ウイスキー(の製造・販売)へと移行しつつあるようだ。インド国内だけでなく世界でも」と話した。

ペルノの「グレンリベット」は長らくインドで最も売れているシングルモルトで、昨年は販売数量が39%伸びたものの、183%の急成長を遂げたアムルットに追い抜かれたことがユーロモニターのデータで分かる。

飲料市場調査会社IWSRのデータによると、インド製シングルモルトの販売は2021年から22年にかけて144%拡大し、伸び率はスコッチの32%を上回った。2027年までに、インド産モルトの消費量は年率13%増え、スコッチの8%増をしのぐと同社は推計している。

インドリを所有するピカデリーの創業者、シッダールタ・シャルマ氏は、2025年までに生産能力を66%拡大し、1日2万リットルとしたい考えを示した。現在、売上高の30%を占める18の外国市場以外にも販路を広げたいという。

インド製ウイスキーは、決して安いわけではない。ニューデリー近郊の店舗では、インドリの最低価格が1本37ドル、アムルットが42ドル、ランプールが66ドルなのに対し、ペルノのグレンリベットは熟成年数によって40ドルから118ドルだ。

ランプールを擁するラディコ社で国際事業の社長を務めるサンジーブ・バンガ氏は、「ディアジオとペルノがともにインド製シングルモルトを発売したこと」が、インド製ウイスキーに最大のお墨付きを与えたと指摘。「両社は、これが未来のカテゴリーであることに気付いたのだ」と胸を張った。

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