• 2023/12/29 掲載

焦点:多様性推進に保守派の圧力、米主要企業が取り組み軌道修正

ロイター

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Jody Godoy Disha Raychaudhuri

[18日 ロイター] - 多様性・公平性・インクルージョン(DEI)推進の取り組みについて、JPモルガンを含む少なくとも米主要6社が、訴訟をちらつかせた保守系団体からの圧力を受けて軌道修正していることがロイターの調査で分かった。

これらの企業は2021年以降に「DEIプログラムは違法な差別であり、株主に対して取締役が負う責任を果たしていない」とする株主からの書簡を受け取った25社の一部。具体的には、プログラムの説明から特定の人種や民族を対象とするとの表現を削除したり、従業員の人種多様化に関する経営幹部の目標を変更したりしている。

書簡を送られた企業のうち、マクドナルドや、スターバックスなど残る19社はDEIプログラムに何らかの変更を加えた形跡は確認できなかった。

スターバックスの広報担当者は、同社は相互信頼の文化を築いていく決意だと述べた。マクドナルドはコメント要請に回答していない。

一方JPモルガンは昨年5月、10種類のDEI推進措置が差別的で違法だと指摘する書簡を受け取った。ウェブサイトの記録を見ると、今年2月ごろには、当初ヒスパニックと黒人の学生インターンを積極的に採用するために導入されたプログラムについて、「バックグランドにかかわらず」全ての学生が応募可能とされていた。

JPモルガンの広報担当者は「最優秀の人材で構成される包摂的(インクルーシブ)な人員態勢確保に全力を注ぐ姿勢に変わりはない」と述べた。

今年4月に書簡が届いたブラックロックは、ある奨学金制度に関して、幾つかの「過小評価グループ(女性、人種的マイノリティー、性的マイノリティーなど)」のメンバー向けに設計されたとの文言を削除。広報担当者は、奨学金制度の資格対象を拡大したことを誇りに思うとコメントしている。

米企業の間では、2020年に黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官に殺害された事件などをきっかけに人種差別への抗議行動が強まった後、DEIを積極的に推進する取り組みが広がった。ただ足元の一部主要企業の対応からは、こうした取り組みに対する保守派の反発がいかに強いかがうかがえる。

各社に書簡を送ったのは「アメリカン・シビル・ライツ・プロジェクト」と「アメリカ・ファースト・リーガル」という二つの保守系団体。前者を創設したテキサス州の弁護士ダン・モレノフ氏は「法制順守や全ての米国民を公正公平に扱うことに向けた小さな歩みは間違いなく歓迎される」と語った。

歴史的黒人大学であるモアハウス大のデービッド・トーマス学長は、白人に有利な無意識の偏見を払しょくする取り組みをやめてしまうことで、過小評価グループが組織のトップに上り詰める道が確実に閉ざされていくと批判している。「これから30年後、米企業はプランテーションのような環境になるだろう」という。

来年は米大統領選が控え、共和党候補指名を争っているトランプ前大統領やフロリダ州のデサンティス知事がこれまでさまざまなDEI推進措置を禁止してきたこともあり、DEIプログラムへの攻撃は続く公算が大きい。

今年6月、米最高裁が大学の入学者選抜で人種を考慮する「アファーマティブ・アクション」は違憲だとの判決を下したことも、DEI推進反対派を勢いづかせている。

<訴訟リスクはあるか>

保守派団体の書簡は、幾つかのDEI推進措置は企業を訴訟リスクにさらしており、撤廃しなければ取締役会の責任を問う訴えを起こすと主張している。

アメリカ・ファースト・リーガルは昨年7月、ジーンズの「Lee」ブランドを展開するコントールブランズが20年に設定したDEIの目標をやり玉に挙げた書簡を送った。同社は、ジェンダーや人種の面で過小評価グループの比率引き上げのために経営幹部向けの報酬インセンティブなどを導入した。

コントールの今年3月の届出書類によると、その後このインセンティブは従業員の「インクルージョン」改善に関連すると改められ、ジェンダーや人種への言及はなくなった。

確かに株主は、取締役が業務監督などの義務を怠れば訴えることができる。しかし企業法は誠実な判断をした取締役が訴訟対象にならないよう定めており、保守派にとってDEI推進措置を法廷闘争に持ち込むまでのハードルは高い。

モレノフ氏と保守系の株主団体「ナショナル・センター・フォー・パブリック・ポリシー・リサーチ」は昨年11月、スターバックスの取締役を提訴。取締役が自分たちの「社会的信用」を獲得するために同社のDEIプログラム採用を推進したとその理由を説明した。

ただ今年9月、ワシントン州の連邦地裁は訴訟を却下し、取締役会による妥当で合法的な決定は裁判所の管轄ではないとの判断を示した。

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