- 2023/12/29 掲載
銀行界、新型融資の活用拡大=新興企業の資金調達を支援
銀行が、創業間もないスタートアップ(新興企業)の資金調達支援に乗り出している。新株予約権と融資などを組み合わせた「ベンチャーデット」と呼ばれる手法を活用。ベンチャーキャピタル(VC)による出資に依存してきた新興企業の資金調達手段の多様化が期待されている。
ベンチャーデットは、銀行が企業から新株予約権を取得し、それを担保代わりに融資する手法。銀行側は株式の価値が高まるのを待って権利行使するケースが多く、VCへの新株発行よりも株式の価値の希薄化を避けられるほか、土地や建物など資産がなくても、多額の融資を受けやすい利点がある。銀行側も、新興企業が株式を上場すれば、取得した株式を売却しリターンを得られる。
ベンチャーデットは、今年に入ってみずほフィナンシャルグループや三井住友銀行、りそな銀行などの大手が本格参入。静岡銀行など地域金融機関も強化し始めている。早稲田大学の入山章栄教授は「経済の疲弊が進む地方では新産業創出が不可欠。地銀には力を入れてほしい」と期待する。
2008年度に取り組みを始めた日本政策金融公庫の22年度の融資実績は75億円と前年度の2倍に拡大した。創業間もない企業の審査は難しく、最近は金融機関からノウハウについての問い合わせが増加。日本公庫の荻布靖新事業・スタートアップ支援総括課長は「競争優位性や販売体制など黒字化の道筋について丁寧で細かな分析が大事だ」と話す。
日本公庫などから融資を受けたIT企業、スカイディスク(福岡市)の内村安里最高経営責任者(CEO)は「資本政策的にも、株式の割合を抑えて大口資金を調達できるのが魅力」と語る。
三菱総合研究所によると、ベンチャーデットの規模は米国で年間2兆円超(20年時点)だが、日本は推計で100億円程度にとどまる。全国各地で起業家育成事業を行うガイアックスの上田祐司社長は「これまで銀行が参入しないのに違和感があった」と語り、銀行による積極的な取り組みを求めた。
【時事通信社】 〔写真説明〕商談会で自社サービスについて説明するスカイディスクの内村安里最高経営責任者(右)=11月、東京都千代田区 〔写真説明〕オンライン取材に応じるガイアックスの上田祐司社長=11月
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