- 2023/12/20 掲載
来春のマイナス金利解除が焦点=賃金・物価の好循環、慎重に判断―日銀
日銀が来年の春闘での賃上げ動向を見極め、マイナス金利政策の解除に踏み切るかが焦点となってきた。消費者物価上昇率は1年半以上にわたり、日銀が目標とする2%を上回って推移。賃上げの原資となる企業収益も好調だ。日銀は賃金と物価がともに上昇する好循環が実現するか、さまざまなデータを分析し、慎重に判断する構えだ。
「物価目標実現の確度は少しずつ高まっているが、賃金と物価の好循環が強まるか、なお見極める必要がある」。植田和男日銀総裁は19日、大規模金融緩和の継続を決めた金融政策決定会合後の記者会見で、2%の物価目標の持続的実現に一定の手応えを示しながらも、当面粘り強く緩和を続ける考えを強調した。
背景には、物価高に賃上げが追い付かず、消費者の節約志向が強まっていることや、欧米経済の減速懸念がある。植田総裁は会見で、消費全体では緩やかな回復が続くと説明しながらも「食料品や日用品などには生活防衛的な弱めの動きも見られている」と警戒感を示した。
市場では、植田総裁が今月7日に国会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言したことを受け、早ければ来年1月にも日銀がマイナス金利の解除に動くとの見方が浮上した。
これに対し、植田総裁は会見で、「物価目標の持続的・安定的実現が必ずしも見通せない状況だ」と説明。その上で「1月の決定会合までに、新しいデータはある程度入ってくるが、それほど多くない」と述べ、年明け早々の決断は容易ではないとの見方を示唆した。
米連邦準備制度理事会(FRB)は今月13日、利上げ路線を事実上打ち切り、来年は利下げに転じる見通しを表明した。FRBが利下げする一方、日銀がマイナス金利を解除すれば、「日米金利差縮小から急激な円高が進行して株安に波及しかねず、日銀の政策修正は難しくなる」(外資系運用会社)との見方は多い。
さらに、自民党派閥の政治資金パーティー収入の裏金疑惑が浮上。政局が混迷すれば、金融政策の判断にも影響が及ぶ恐れがある。
植田総裁が利上げであるマイナス金利の早期解除を決断できるかは、年明け以降の経済・物価情勢がカギを握る。1月会合で政策修正を見送れば、その次の3月会合で是非を判断することになる。
【時事通信社】 〔写真説明〕金融政策決定会合後、記者会見する日本銀行の植田和男総裁=19日午後、東京都中央区
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