- 2023/12/14 掲載
焦点:米市場はFRBのハト派転換を歓迎、来年のリスク不安視する声も
[ニューヨーク 14日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のハト派転換によりダウ工業株30種に続きS&P総合500種も近く過去最高値を更新する可能性が強まった。ただ、一部の投資家は経済や企業業績の見通しが不透明なことから市場の動きが速すぎるのではないかと懸念している。
FRBは13日まで開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を予想通り5.25─5.50%で据え置いた。同時に発表した最新の金利・経済見通しで、過去約2年にわたって実施した歴史的な金融引き締めは終わりを告げ、来年には金利が低下し始める可能性が示された。
FRBが発したメッセージは多くの投資家が予想していたよりもハト派的だった。S&P500は13日に約1.4%上昇し、FOMC声明発表日としては2022年7月以来の大幅上昇となった。米10年国債利回りは8月以来の低水準となる4.02%を付けた。
ジョン・ハンコック・インベストメント・マネジメントの共同チーフ投資ストラテジスト、マシュー・ミスキン氏は「FRBの利上げが打ち止めとなり、その確信が高まったことに市場はかつてないほど沸いている」と述べた。
FRBの見解は以前より投資家の見解に近くなったが、市場の見通しのほうが依然としてはるかにハト派的だ。
FOMCの金利・経済見通しでは19人の政策担当者のうち17人が24年末には政策金利が現在よりも低下するとの予想を示した。中央値では、FF金利誘導目標は現在の5.25─5.50%から4.6%に低下するとの予想が示された。LSEGのデータによると、先物市場では3.847%への低下が織り込まれている。
12月下旬はマクロ経済面で主要イベントがほとんどないため、S&P500は22年1月に記録した終値での過去最高値(4796.56)以上の水準で年末を迎える可能性がある。現在、同水準まで2%未満に迫っている。ダウ工業株30種は13日の終値で22年1月以来約2年ぶりに過去最高値を更新した。
季節要因も米株の追い風となるかもしれない。LPLファイナンシャルのデータによると、1950年以降のS&P500は12月が3番目に好調な月で、通常は月前半よりも後半のほうが強いという。
これまで弱気だった投資家のポジション修正が相場を支援する可能性もある。バンク・オブ・アメリカ(BofA)グローバル・リサーチ によると、レバレッジ型ファンドはS&P500が第4・四半期に復調してからもネットショート(空売り)ポジションを増やし、逆張りを続けているという。
ミスキン氏は「今年の年初は相場が割安で投資家心理は弱気だった。来年を迎えるにあたり経済の軟着陸(ソフトランディング)が大方の見込みで、投資尺度がかなり高くなり、業績予想も切り上がっている。この結果、市場の環境は厳しくなるだろう」と予想した。
LSEGデータストリームによると、S&P500構成企業の予想PER(株価収益率)は19.1倍と、長期平均の15.6倍を大きく上回っている。24年は11.4%増益と、23年の2.6%よりも増益幅が拡大すると見込まれている。
マディソン・インベストメンツの債券責任者マイク・サンダース氏は今後6カ月はインフレの鈍化が続き、雇用市場が安定を保つかが焦点になると指摘。「ソフトランディングが単にハードランディング(硬着陸)の前触れではないことを確かめる必要がある」とした。同氏は5年物米国債に強気の見方を示している。
グレンミードの投資戦略・調査責任者、ジェイソン・プライド氏はFRBの最新経済見通しがソフトランディングを見込んでいるようだとした上で「経済にマイナスの波及なく金利が長期間にわたりこれほど高くとどまったことは、かつてない」と指摘した。
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