• 2023/12/10 掲載

「ササニシキ」復権へ試行錯誤=「冷夏」「酷暑」乗り越え―宮城県

時事通信社

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あっさりとした味わいが特長の銘柄米「ササニシキ」が今年、誕生から60年の「還暦」を迎えた。1985年には作付面積がコシヒカリに次ぐ全国2位に広がったが、寒さに弱く、93年の冷夏以降、作付面積は減少の一途をたどる。さらに、今年は記録的な酷暑にも見舞われた。ササニシキの復権を目指そうと、生誕地の宮城県内では、試行錯誤が続いている。

同県大崎市は2017年から、ササニシキとササニシキ系のブランド米「ささ結」に限定した食味コンクール「『ささ王』決定戦」を始めた。背景には「(全国コンクールで)評価項目に『粘り』が含まれる場合、粘りの少ないササニシキ系には分が悪い」(市の担当者)という事情もある。

「食の多様化に合わせコメも多様であるべきだ。発祥地だからこそ、『ササ系』を次の世代につなげたい」。担当者はこう話し、和食に合うという食味の魅力を強調する。今年で7回目となる決定戦には、4県から計83点が出品された。

ササニシキは63年、大崎市の古川農業試験場で生まれた。多収に優れ、作付面積が拡大していったが、93年の冷夏で、平年を100とする作況指数が県全体で37に悪化。農家は大凶作による壊滅的な打撃を受けた。

同市の農家、斉藤武康さん(73)もその一人。93年の収穫量は例年の2割にも満たず、「7月なのにこたつを出すほど寒かった。『これはやばい』と覚悟した」と当時を振り返る。一度はササニシキの生産から離れたが、「『ササ』はないか」と求める顧客の声に応じようと栽培を再開。「ここで生まれたコメだから。作れる限りは作りたい」と力を込める。

今年の酷暑では、斉藤さんの水田も倒れた稲が多く、「この暑さは乗り切れなかった」と悔しがる。「『ササ』は難しい。それでも肥料を抑えるなど育成には気を配っており、食味のいいコメを作って少しでも単価が上がるようにしたい」と話す。

【時事通信社】 〔写真説明〕「『ささ王』決定戦」で出品されたササニシキの香りや味を比べる審査員=11月22日、宮城県大崎市

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