• 2023/12/10 掲載

縮む国内需要、続く生産抑制=食料安全保障への対応課題―コメ市場開放合意から30年

時事通信社

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日本がコメ市場を部分開放したウルグアイ・ラウンド(多角的貿易交渉)の実質合意から15日で30年。コメの国内需要の縮小には歯止めがかからず、需給均衡に腐心する政策が形を変えながら今なお続く。だが、ロシアによるウクライナ侵攻を機に食料安全保障の確保が農政の課題に大きく浮上。縮む国内市場から目線を海外に移した政策への転換を求める声が上がる。

「あれがあったから輸入やむなしとなった」。1993年当時、農林水産省の交渉担当だった山下一仁キヤノングローバル戦略研究所研究主幹は、同年夏の冷害を振り返る。冷夏によりコメが大不作となった日本は中国やタイから約260万トンのコメを緊急輸入。一連の混乱は「平成の米騒動」と呼ばれた。

日本はコメを「1粒たりとも入れさせない」と市場開放を拒否していたが、これで風向きが変わった。国内の根強い抵抗に配慮し、関税化は回避したが、代償としてミニマムアクセス(最低輸入量)米を受け入れることを決めた。輸入枠は99年度に関税化するまで年々拡大し、現在も合意に基づき年間約77万トンの輸入を続ける。

一方、主食用米の国内需要は、近年は毎年10万トンのペースで減少している。国内市場が縮小する中、18年に行政による生産数量目標の配分は廃止されたものの、農水省は小麦や大豆などの自給率の低い畑作物への転作を支援し、コメの需給バランスを保とうとする政策を続ける。

99年に制定された食料・農業・農村基本法は自由化に対応するため、大規模な専業農家を中心に生産性向上を目指す方向にかじを切ったはずだった。ただ、政府・与党が進める同法の見直し議論では、生産集約による効率化を阻んでいるとの指摘もある自給的農家や兼業農家を含む「多様な農業人材」を重視する方向性が示されており、「時計の針が逆回転している」(山下氏)との批判もある。

日本人の主食であるコメの生産を抑制する政策は食料安全保障に逆行するとの指摘もある。16~18年に農水事務次官を務めた奥原正明氏は、コメ政策について「輸出拡大と生産性向上を同時並行で強力に進めるべきだ」と指摘。「国際的な競争力をつけ、国内生産を拡大するのが食料安全保障の基本だ」と強調した。

【時事通信社】 〔写真説明〕コメ市場開放反対の全国農業者総決起大会で気勢を上げる参加者=1993年12月、東京都千代田区の日比谷野外音楽堂 〔写真説明〕ジュネーブでのウルグアイ・ラウンドの事実上の合意を受け記者会見を行い、コメの部分開放を含む同ラウンドの受け入れを発表する細川護熙首相(肩書きは当時)=1993年12月、首相官邸 〔写真説明〕ガットのウルグアイ・ラウンド合意案を採択するサザーランド事務局長(肩書きは当時)=1993年12月、スイス・ジュネーブ(AFP時事)

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