- 2023/12/09 掲載
再編加速の引き金に=東芝・ロームのパワー半導体連携
東芝とロームが、電気自動車(EV)向けなどで世界的に需要が高まるパワー半導体の分野で連携し、相互委託生産に乗り出す。日本ではパワー半導体のメーカーが乱立し、国際競争力強化には規模拡大や効率化が急務だ。今回の動きは両社の一段の関係強化だけではなく、他の日本勢の再編を加速させる引き金となる可能性がある。
世界のパワー半導体市場では欧米勢が優勢で、首位の独インフィニオン・テクノロジーズは2割強のシェアを占める。日本勢は東芝、ロームのほか、三菱電機や富士電機、ルネサスエレクトロニクスなどが有力だが、シェアはいずれも数%程度にすぎず、競争力で劣っている。
この現状を憂慮した経済産業省は、パワー半導体の設備投資案件に補助金を出す制度を今年1月に導入した。複数社で組んだ申請を促すため、2000億円以上の巨額投資を条件とした結果、東芝とロームが支援対象に選ばれた。
東芝は炭化ケイ素(SiC)製パワー半導体の大半をロームに生産委託する一方、ロームはシリコン(Si)製の一部を東芝に製造してもらう。重複投資を抑え、製品の供給量を増やせる点が最大のメリットだ。
今後の焦点は両社のさらなる連携強化に移る。ロームは、投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)陣営による東芝買収に加わり、計3000億円を拠出した。その際、「将来的に機会を頂ければ協業・連携にも関心を持っている」と表明しており、事業統合まで踏み込む可能性もある。
他の日本勢でも、11月にベアリング大手ミネベアミツミが日立製作所のパワー半導体子会社の買収を発表するなど、独自に再編の動きが広がる。経産省は「国内メーカー同士の連携が不可欠」(西村康稔経産相)とみて、各種支援策を通じて東芝・ロームに続く動きを後押しする方針だ。
【時事通信社】
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