• 2023/12/06 掲載

YCCで国債流動性が低下、物価押し上げ1%程度=日銀レビュー資料

ロイター

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Takahiko Wada

[6日 ロイター] - 日銀は6日、金融緩和政策を巡る多角的レビューの第1回ワークショップにおける日銀側の説明資料を公表した。イールドカーブ・コントロール(YCC)で日銀が大規模な国債買い入れを継続する中、国債の銘柄別の保有比率が70%以上になると取引高が減ることが示された。このほか、非伝統的な金融政策でインフレ率の押し上げは1%程度にとどまることなどが指摘された。

ワークショップは4日、学識経験者や金融機関のエコノミストなどが参加してメディア非公開で行われた。

金融市場局は量的・質的金融緩和(QQE)やYCCが国債市場の流動性やイールドカーブの歪みに与えた影響を分析した。それによると、日銀の保有比率が70%以上を上回った状態で国債買い入れを実施すると、「取引高を減らす方向で作用する」とした。また、債券市場の流動性指標の1つであるビッドアスクスプレッドは保有比率が50%を超えると急速に拡大し、流動性の低下が強まることが示された。

日銀の保有比率が高い銘柄はイールドカーブに低下方向の歪みが生じやすいとし、「2022年以降実施されるようになった連続指し値オペは、10年新発債のイールドカーブに低下方向の歪みを生じさせた可能性」と指摘した。

企画局は非伝統的な金融政策が日本の経済・物価にもたらした影響を分析。非伝統的な金融政策は生産の押し上げに大きく寄与し、「潜在成長率を下支えしていた可能性が示唆される」としたほか、雇用環境を改善させ、雇用者所得を拡大させたことが示唆されるとした。

非伝統的な金融政策による物価の押し上げが1%程度にとどまることで、日銀は、中長期のインフレ予想の変化や賃金と物価のダイナミクスなど、今回の分析で考慮していない要素も含めて「総合的に分析する必要がある」とした。

<預金の粘着性、低下している可能性>

金融システムを所管する金融機構局は、銀行が抱える金利リスクに警鐘を鳴らした。現状では資産サイドの金利リスク増加をコア預金で相殺しているものの、「オンラインバンキングの普及により、預金の粘着性が低下している可能性」と指摘した。

今年3月に発生した欧米の金融不安では、粘着性が低く逃避の速い預金の存在が問題になった。

「金融機関は、金融仲介機能を発揮しうる損失吸収力を備えている」とする一方で、基礎的な収益力が低下しており「大きなストレスに耐えられたとしても、いったん既存した自己資本を復元することは容易ではない」と言及した。

(和田崇彦)

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