- 2023/12/06 掲載
賃金・物価の好循環よく見極め、出口を適切に判断=氷見野日銀副総裁
[大分市 6日 ロイター] - 日銀の氷見野良三副総裁は6日、大分県金融経済懇談会であいさつし、金融緩和からの出口戦略について、一番気を付けなければならないのは「賃金と物価の好循環の状況をよく見極めて、出口のタイミングや進め方を適切に判断することだ」と述べた。
現状は、企業の賃金・価格設定行動の変化はまだ十分に進んでいないとの見方を示し、賃上げを伴う形で物価目標の実現を見通せるようになるまで、粘り強く金融緩和を継続していくと話した。
氷見野副総裁は物価目標の実現に当たり、「今後、インフレ率は下がっていくが、下がりすぎない」という微妙なラインが実現しなければならないと述べた。
その上で、企業による賃金・価格設定行動の変化について、輸入物価上昇の販売価格への反映、物価高の賃金への反映、賃上げに伴うコスト増の価格への反映、価格戦略の多様化の4つの段階に分けた上で、企業の聞き取りを踏まえると「現状、いずれの段階もまだら模様のように見える」と述べた。
植田和男総裁は物価の上昇要因を説明する際、輸入物価の上昇に由来する「第1の力」と賃金・物価の好循環による「第2の力」に分けて説明している。氷見野副総裁は今回、4つの段階に分け、第4段階として価格戦略の多様化を示した。
氷見野副総裁は、物価上昇の分、賃金が上がるだけでは暮らしは「実質では良くならない」と指摘。「価格戦略の多様化・高付加価値化・生産性向上の段階が始まり、その成果が分配されてこそ、暮らしが良くなっていく」とした。企業にとって、高付加価値化の段階まで進めば「後戻りの可能性はだいぶ小さくなるのではないか」とも話した。
一方で、将来的な金融緩和からの出口戦略の局面で、具体的にどのような影響が出るか解説した。
金融機関については、金利上昇で保有している長期債などに含み損が出る一方で、貸出で利ざやが取りやすくなると述べ「短期的には一定のストレスもありうるが、低金利が続く環境に比べれば銀行経営はずっと成り立ちやすくなる」と述べた。移行過程では適切なリスク管理が必要だが、「金融システム全体としては移行過程のストレスを乗り切れるだけの頑健性を有している」と説明した。
氷見野氏は金融庁長官の経験者として初めて今年3月に副総裁に就任した。金融経済懇談会でのあいさつは就任後初めて。
(和田崇彦)
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