- 2023/12/06 掲載
焦点:ECBと市場を「和解」させたシュナーベル専務理事、早速控える次の闘い
[フランクフルト 5日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル専務理事による発言で、長い間ECBの利上げ打ち止めを予想してきた投資家とECBはついに和解の時を迎えた。ただ同時に、市場とECBの間では最初の利下げ時期を巡る新たな綱引きが始まりそうだ。
ECBの有力なタカ派と目されているシュナーベル氏はロイターの単独インタビューに応じ、インフレ率が「顕著に」低下しているため、追加利上げを選択肢から外すことは可能だとの見解を示した。14日のECB定例理事会を控え、幹部らが公の発言を控えるブラックアウト期間に入る直前のインタビューとなった。
同氏はまた、政策金利を来年半ばまで過去最高水準に維持すべきだという、他のECB理事らの発言を繰り返すことを避けた。その代わりに同氏が語ったのは、政策担当者らは手掛かりを得るために今後の経済データに注目し、拙速にインフレ退治の勝利宣言をすることには慎重になるだろう、ということだった。
ここ数週間、ラガルデECB総裁や一部の理事は、物価・与信統計の弱さに対応してECBが来春にも利下げを実施するという市場の観測を抑えるよう努めてきたが、観測は収まっていない。
レッドバーン・アトランティックのチーフエコノミスト、メリッサ・デービーズ氏は、シュナーベル専務理事のような「介入」が必要だったと指摘。「彼女(シュナーベル氏)が市場に言っているのは、『あなたがたの読みは正しい線を行っているが、春の利下げに賭けるのは行き過ぎだ』ということだ」と語った。
ただ、トレーダーは正にそうした予想に賭けている。
市場は今、予想される利下げ時期を4月から3月に前倒しするとともに、来年12月までに合計140ベーシスポイント(bp)の利下げが実施されることを織り込んでいる。利下げの時期とスピードを巡るECBと市場とのかい離は広がるばかりだ。
HSBCのシニア欧州エコノミスト、ファビオ・バルボーニ氏は「彼女(シュナーベル氏)が、現在の市場の見方にお墨付きを与えたと結論付けてはならないと思う。一部の人々は、彼女の発言を拡大解釈している危険がある」と話した。
シュナーベル専務理事は、保守派理事の中で最も強い影響力を持っているとみられており、その発言には重みがある。
もっともシュナーベル氏は、ECBは市場よりも慎重になり、石橋を叩いて渡るべきだと明言し、ECBとしての基本姿勢を説明している。
<春の利下げが難しい理由>
エコノミストらは、ECBが4月かそれ以降まで金利を据え置くと考えられる理由をいくつも挙げている。
第1に、政策担当者らは賃金交渉の妥結データを見極めたいはずだが、完全なデータは春まで入手できない。
第2に、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)に基づき購入した1兆7000億ユーロ(1兆8400億ドル)の債券について、今後の取り扱いを決める必要がある。
ECBは現在、満期を迎えた債券の償還金の再投資を2024年末まで続けると約束している。この期日を前倒しする可能性は高いが、債券市場を混乱させないよう、再投資の中止は段階的に進める必要があるだろう。
ダンスケ・バンクのECB担当ディレクター、ピエット・ハイネス・クリスチャンセン氏は「再投資を続けながら利下げすることは無理だ」と指摘し、最初の利下げは6月になるという従来予想を維持すると述べた。
最後に、ECBは春ごろ、今後数年間の市中銀行への資金供給方法を巡る検討作業の真最中になるだろう。貸し出しの形にするのか、それとも債券を購入するのかといった複雑な問題であり、政策担当者は時間とエネルギーを消耗することになる。
レッドバーン・アトランティックのデービーズ氏は「春には多くの事があり過ぎて、利下げも同時に行うのは難しい」と語った。
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