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暗号資産やNFTが世界中で普及してきているが、その税制については各国で課題を抱えている。日本では税率の高さに批判の声が上がり、米国では申告漏れによる税逃れが多発している。こうした中、米バイデン政権は2023年度の予算教書で暗号資産税のルール整備を打ち出した。従来取り逃してきた課税対象を捕捉することで、10年間で109億ドル(約1兆4,000億円)の増収を見込む。立法化に向けては、暗号資産の定義や時価評価の方法など、4つのポイントが主な争点となりそうだ。日本の暗号資産税制にもかかわる日米の動きをまとめた。
課題だらけの暗号資産・NFT税制、なぜ税逃れが多発するのか
日本の場合、暗号資産は累進課税のため、収入が高くなればなるほど支払う税金は高くなる。所得税は税率が最大45%だが、住民税と合わせれば最大55%となり、その税率の高さに批判の声も上がっている。
一方、米国ではバイデン政権主導の下、暗号資産の規制に向けた議論が着々と進んでいる。野放し状態の暗号資産に正統性を与え、市場を活性化させるために、ルールに従って安全安心に取引される「金融商品」として生まれ変わらせようという計画だ。
そうした暗号資産の金融商品化のプロセスに欠かせないのが、税制の整備である。
米国では現在、暗号資産の購入が課税対象として扱われ、まず購入時の価値が記録される。そして、暗号資産を売却して手放した際や、暗号資産を使って物品・サービスを購入した際の価値と、購入時の価値との差額に対して、1年以内の取引であれば10%から37%、1年以上であれば状況に応じて0%、15%、あるいは20%のキャピタルゲイン税がかかる。
表面的には特に難しい計算ではないような印象を受けるが、(1)暗号資産の定義の範囲、(2)時価評価の方法、(3)国税当局に取引報告義務を負う「ブローカー」の定義、(4)米居住者による海外での暗号資産取引への課税、などのルールが実はしっかりと定まっていない。そのため、申告漏れが多発して不公平感が高まっており、立法化に向けてもこの4点が主な争点になりそうだ。
このような取り逃がされている税収を規則の整備で捕捉できるようにすれば、連邦政府は前述のように2023年から2032年の間に年平均で10億ドルの増収が見込めるというわけだ。課税ルールの明確化は、暗号資産の金融商品化と正統性の獲得も促し、米金融市場をさらに活性化させる効果も期待できるため、バイデン政権の取り組みには力が入る。
事実、予算教書では司法省に5,200万ドルの予算をつけることで、情報収集や分析を強化し、暗号資産を利用した税逃れに対処する方針だ。
ちなみに、厳密に暗号資産には分類されないが、偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータであるNFTについても、「芸術作品の所有権」「クラブの会員権」「イベントへのアクセス」「金融商品の所有権」など、ひも付けられるモノやサービスが広範囲すぎるため、IRSは課税方法について頭を悩ませている。
暗号資産の税収は「ブローカー」の定義が左右する
暗号資産はテクノロジーの新天地であるがゆえに開発と使用が先行し、規制は常に後手に回ってきた。また、テクノロジーはこの先も進化し続けることが予想されるため、今日の規制や課税方法が明日も適切であるとは限らないのが悩ましいところである。
たとえば、課税対象となるブローカーの定義をめぐり、米議会ではせめぎ合いが続いている。実は、2021年に成立した大型経済政策のインフラ投資法案により、暗号資産のブローカーが、顧客の1年間の取引について納税シーズン前に米内国歳入庁(IRS)に報告することは、すでに定められている。
だが、誰が「ブローカー」に相当するのかについてはいまだ疑義があり、米議会により詳細な定義を含む立法が求められているのだ。その答えとして、シリコンバレーを含む選挙区を地盤とするロー・カンナ下院議員など一部の民主党議員および共和党主流派が上程した「米国イノベーション継続法案」においては、顧客情報を持たない非中央化された取引所はIRSに対する取引の報告義務を負わないことが規定されている。
逆に、中央化された取引所は「ブローカー」としての報告義務がある。暗号資産の課税対象を広げるのか、狭めるのか、米議会の定義次第で課税や規制は強くも弱くもなる。暗号資産をめぐる議論の本質が、概念の定義に関する争いであるゆえんだ。同様に、「暗号資産」がどのように定義されるかで、税収の規模や規制範囲も変わる。
米税制では所得にまつわる取引や課税イベントの報告義務は基本的に第三者が負うため、その定義は重要なポイントだ。さらに、暗号資産では中心的な第三者機関や装置を介さないピアツーピア取引が可能な場合があり、取引の捕捉しにくさをどう解決するのか、立法側の知恵が問われる局面でもある。
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