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オンライン開催となったCES 2021で基調演説を行ったウォルマート。家電ショーの基調演説に小売企業のウォルマートが選ばれたのは、同社が流通やさまざまな事業を通して現在ではテック企業としても認識されているからだという。2020年はコロナ禍でアマゾンと共に勝ち組となった同社は、今後、金融部門をさらに充実させていく構えだ。
アマゾン化するウォルマート
ウォルマートは全世界に1万1000店舗を展開、従業員数は200万人を超える、世界最大の小売業大手だ。
同社CEO、ダグ・マクミロン氏はCESの基調演説の中で、「ウォルマートはサプライチェーンに多くのテクノロジーを導入している。データ分析やロボティクスなどを積極的に活用し、顧客の買い物、デリバリーにかかる時間を短縮するためのさまざまなコネクテッド・エコシステムを構築している」と語った。
たとえば同社は2020年9月、「Walmart+(ウォルマートプラス)」という新しいサービスをローンチした。これはアマゾンにおける「アマゾンプライム」に匹敵するサービスだ。
年会費98ドルもしくは月会費12ドル50セントを支払うことで、無制限の無料デリバリー、スキャン&ゴー(ウォルマートアプリを使い、店舗での買い物時にスマホを使って自分で商品をスキャン、支払いもウォルマート・ペイで行えるサービス)、全米2000の店舗およびマーフィUSAのガソリンスタンドで、1ガロンあたり5セントのガソリン料金割引などが受けられる。
アマゾンプライムと比較すると、無料デリバリーは同じで、プライムにはビデオサービスがあるがウォルマートプラスにはない。しかし、実店舗を持つウォルマートならではの強みもある。特にガソリンの割引はホールセール大手のコストコも行っており、人気の高いサービスだ。
金融商品としてはウォルマートマネーカードもある。これはプリペイド方式のデビットカードで、ウォルマートに設置されたキオスクで簡単に入金することができ、ウォルマートのウェブサイトやアプリ、店舗での買い物が割引される。また、給与の振込先をこのカードに設定することで、通常の給与日よりも2、3日前から現金が利用できるなどのメリットがある。
さらに、ウォルマートのマネーカードは通常の銀行と異なり、口座を開くのにクレジットヒストリーのチェックがなく、オーバードラフトへの罰金や最低課金制度もない。口座維持にかかる手数料もなく、利用しやすい環境となっている。
ウォルマートがフィンテックに注力する理由
このようにほとんど銀行業務に乗り出しているウォルマートが、フィンテックにより重みを置くのも当然と言える。
同社は1月11日、リビット・キャピタルと提携して新たなフィンテックのスタートアップを設立すると発表した。リビット・キャピタルは若者に人気のスマホアプリによる株式投資を提供する
ロビンフッドの親会社でもある。
まだスタートアップの名称やサービス概要、サービス開始時期などは発表されていないが、同社は「自社の従業員および顧客に対し、ユニークで安価な金融商品を開発するのが目的」としている。
ウォルマートUSのCEOであるジョン・ファーナー氏は、「我社の顧客は、低価格で商品を提供し、さらに金融ニーズにも応えるウォルマートへの信頼度を高めている。顧客の側から、もっと金融商品を充実させてほしいという要望がある」と語る。
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