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  • 2019/10/03 掲載

「スーパーアプリ」とは何か?統合アプリ戦争勃発、LINEがWeChatやAlipayを追うワケ

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スマホアプリは日常生活に欠かせない存在となった。ただ、いちいちアプリを立ち上げるのも面倒だ。そんな煩わしさからユーザーを解放するのが、さまざまなサービスを統合した「スーパーアプリ」である。中国の「WeChat」や「Alipay」、インドネシアの「Go-Jek」、シンガポールの「Grab」などは代表的なスーパーアプリで、すべてアジアから生まれている。なぜか? また、サービスの拡張を進めるLINEはヤフーとの経営統合でこれらのアプリを超えることができるのか。(2020年1月6日更新)
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なんでもできる「スーパーアプリ」はなぜ必要?
(Photo/Getty Images)

スマホアプリの統合版「スーパーアプリ」とは?

 日常生活のあらゆる場面で活用できる統合的なアプリは「スーパーアプリ」と呼ばれている。メッセージングやソーシャルメディア、決済、送金、タクシー配車、飛行機やホテルの予約、Eコマースなど、スマホで一般的に行われるサービスがすべて詰まっている。関連性のないように見えるサービス群が、一貫したユーザー体験のもとで統合されているのが特徴だ。何かをする度にいくつもアプリを立ち上げる煩わしい手間が不要となり、ユーザーにとっての利便性は極めて高い。

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独立したアプリ群(左)とスーパーアプリ(右)

スーパーアプリが必要とされる理由

 では、なぜこうしたスーパーアプリが必要とされるのだろうか? その答を考える前に、まず現状のアプリの状況を考察したい。

 最近、いつスマートフォン(スマホ)に新しいアプリをダウンロードしたか覚えているだろうか。また、ダウンロードした中で、日常的に使っているものはどれくらいあるだろうか。LINEやFacebook、Instagram、人によってはゲームやニュースなどのアプリは日々使用しているかもしれないが、毎日使われるアプリはそれほど多くない。アプリストアには数えきれないアプリが登録されているが、そのほとんどが日常的には利用されていないのが現状だ。

 視聴行動分析サービスを提供するニールセン デジタルが実施した調査によると、ほぼ毎日使われるスマホアプリは平均8個だという。また、マーケティング調査会社のアスマークが実施した調査によると、1カ月あたりに新たにインストールするスマホアプリの数は「1~3個」という人が最も多く、回答者1000人の過半数を超えていた。また、Statistaによると、米国では「スマホユーザーの50%以上が1カ月の間でスマホアプリを1個も追加していない」という。

 これだけアプリが数多く存在するのに、なぜアプリを追加しないのか。新たにアプリを追加する度に「IDとパスワードを作成し、クレジットカードを登録する」というお決まりの流れがある。ユーザーにはこのプロセスが面倒なのだ。

 しかし、1つのアプリですべての機能が完結でき、いちいち複数のアプリを立ち上げたり、閉じたりしなくてもよくなれば、どうだろうか。ユーザー体験はよりスムーズなものになる。ここにスーパーアプリが必要とされる理由があるのだ。

代表的なスーパーアプリはWeChat、Alipayなど

 スーパーアプリのわかりやすい例は、中国のインスタントメッセンジャーアプリ「WeChat」だ。これはメッセージングから決済まで多くの機能を備えているため、アプリ内であらゆるサービスが利用できるようになっている。

 中国ではWeChatと同様、アリババ傘下にあるAlipayが決済サービスに留まらず、配車やフード・デリバリーへと進出し、スーパーアプリへと進化を遂げたインドネシアのGo-Jekは、配車サービスから始まったが、配送・支払い・食事・映画のストリーミング・マッサージや掃除といったサービスの予約まで網羅するようになった。 ソフトバンクが出資するシンガポールのGrabや、インドのPaytmもスーパーアプリの代表例と言える。

 また、最近では、ウーバーがライドシェアビジネスのUberとフードサービスのUber Eatsを統合すると発表。スーパーアプリ化が進むかもしれない。

 では、スーパーアプリはどのように便利なのか。たとえば、朝起きたら「モーメント」と呼ばれるニュースフィードを確認し、通勤中にはWeChat内のゲームを楽しむ。暇があれば友人とグループチャットを行うのはもちろん、ランチの支払いに使うのは「WeChat Pay」だ。仕事終わりの映画やレストランの予約、タクシーの配車にも活用できるなど、朝から夜までWeChatだけで日常生活が事足りるところまで来ている。これこそスーパーアプリがあるから実現する生活だ。

欧米ではなく、アジアでスーパーアプリが誕生した背景

 スーパーアプリが、欧米ではなく、中国や東南アジアで多く見られる点は興味深い。アプリストアが生まれた米国や先行して展開されてきた先進国では、PCからモバイルへと徐々に移行してきたという経緯がある。その途上でソーシャルメディアや配送アプリといった新たなサービスが生まれ、徐々にユーザーからの認知を高めながら、ユーザーを獲得してきた。そのため、独立したサービスが乱立する状態になっている。

 一方、新興国では近年、莫大な資金を調達した企業が、既にビジネスモデルが確立されたサービスを徹底的に模倣している。特に、中国では米国企業が開発したアプリが規制されている背景もあり、WeChatやAlipayがメッセージングアプリや配車サービスなどの仕組みを一気に実装してしまったのだ。

 ユーザー側に視点を移すと、近年、購買力をつけてきた層が初めてインターネットをつなぐのはPCではなくモバイル機器となった。モバイルファーストの文化では、さまざまな独立したサービスを個々に利用するより、アプリを一度開けば何でもできる方が便利だ。また、性能の低い安価なスマートフォンでは、何個もアプリをインストールするのが難しいという側面もある。

【次ページ】スーパーアプリの条件を備えるLINEが目指すもの
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