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  • 2024/08/20 掲載

BIMとは何か? 3分でわかる3D CADやCIMとの違い、普及しない理由とは

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BIMとは、コンピューター上の3次元の形状情報に、建物の属性情報などを内蔵した建物情報モデルを構築するシステムのことだ。BIMを設計から施工までの工程に活用すれば、業務の効率化が実現する。設計時点でミスを可視化できたり、すべての情報を一元化できたりするなど、メリットは計り知れない。しかし、日本における普及率は、米国やイギリス、ドイツなどに比べて低い水準で推移している。BIMは、日本の建築産業の課題を解決する救世主になるか。本記事では、そもそもBIMとは何かを分かりやすく解説しつつ、BIMの日本における普及率を見ながら日本で普及が進みにくい理由について解説する。
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建築業界の課題を解決する救世主になりうる「BIM」とは?
(Photo/Shutterstock.com)

BIMとは

 BIMとは、Building Information Modeling(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の略称で(ビムと読む)、建物の設計や施工、維持管理などの業務で使用されるソフトウェアを指す。

 BIMを使うと、実際に建物を建設する前に、コンピューター上に建物の3Dモデルを簡単に構築できる。完成イメージに近い建物の3Dモデルを確認しながら、建物の設計図を調整・検討することができるため、設計プロセスがスムーズになる。

 たとえば、2次元の図面を基に検討を進める場合、実際に建てた後に、柱・梁とダクト・配管などの躯体・設備が重なっていないか(干渉チェック)や、建物と周辺環境の日当たりの関係性はどうか、といったことを事前にチェックすることは難しかった。しかし、BIMを使えば、実際に建築を始めてから発覚していたこれら問題に設計段階から気づけるようになるため、建設プロセス全体の生産性が向上する。

 また、3Dモデルや3Dモデルに紐づく図面情報と一緒に、その建物に必要になる部材の個数や仕様、概算費用、修繕が必要になる時期、工程や施工に要する時間など、関連する情報を統合・管理できる。そうなると、BIMの情報を確認するだけで、完成イメージだけでなく、工数や施工にかかる時間、コストなどのさまざまな情報を把握できることから、建設プロジェクトに関わるメンバー同士の意見交換や合意形成に役立つ。

 さらにBIMでは、管理しているあらゆるデータが連動して動いてくれる点も特徴だ。従来は使用する部材の仕様や種類などに1カ所でも変更があれば、それに伴い設計図を変更したり、施工にかかる工数を計算し直したりと、関連する箇所の修正に膨大な時間をとられていた。しかし、BIMモデルであれば、BIM上に1カ所変更を加えると、関連する箇所の修正は自動で行われるため、修正に要していた時間を大幅に短縮できるのだ。

 また、関連するすべての箇所に修正が自動で反映されることにより、修正漏れのままプロジェクトが進んでしまう状況も回避できる。実際に建築する現場で、「運び込まれた建材のサイズが異なっている」「実物と図面の内容にかい離がある」といった事態を防げるのだ。

3D CADとの違い

 3D CAD(3Dコンピューター支援設計)は、コンピューターを使用して3次元のオブジェクトやモデルを設計するためのソフトウェアだ。どちらも建物の3Dモデルを作るソフトウェアという点で共通するが、何が違うのだろうか。

 BIMと3D CADの主な違いは、建築部材やコスト、スケジュールといった建築物に関連する情報を同時に管理できるか否かという点にある。3D CADは形状や寸法の表現はできるものの、BIMのように建築物を構成する周辺情報を統合・管理はできない。

 3D CADに限らず、CADと呼ばれるソフトウェアは基本的に、線や面を組み合わせて3Dモデル作成・表現するが、その線や面は、単なる“線や面”として認識するツールだが、BIMは1本の線を、たとえば柱として認識させることができるなど、各オブジェクト(柱、梁、床など)に細かい属性情報を持たせることができる。このように、BIMは線や面などのパーツの区別をしてくれるほか、それら線や面に対して条件式を設定したりすることもできる。

 BIMも3D CADも、基本的にはともに設計図面を作成する際に使用するツールだが、BIMは施工業務でも活用できるほか、メンテナンスや資材管理でも利用価値が高い。また、部材の価格なども統合できるため、コストの見積もりや予算の把握をする際にも役立つ。

CIMとの違い

 CIMは、橋やダムなどの土木構造物で活用される建築情報のモデリングができるソフトウェアを指す。BIMと同じく、設計図面の作成や施工、維持管理に利用される。また、CIMはBIMを参考にして考案されたものとされている。

 ただし、BIMとCIMでは、活用する対象が異なることを押さえておきたい。BIMが建築工事を対象とするのに対し、CIMはダムや道路などのインフラ設備に用いられる。

 BIMの対象である建築物では、必要なのは主に建物に関する情報だが、CIMの対象となる土木構造物では、構造物のほか、周辺の地形や地質などの地理的条件や自然条件の情報も必要だ。このように、モデリングに関する情報も異なってくる。なお、海外ではBIMとCIMの区別がなく、いずれもBIMと呼ぶ。

BIMを導入するメリット

 ここからは、BIMを導入するメリットを確認したい。
■初期段階で安全性や環境性能なども的確に確認できる
 BIMの導入により、設計時点で安全性や環境性能などが可視化される。BIMによるアプローチでは、設計初期段階で3次元建築のモデルと必要な属性情報の作り込みを行い、情報を生かしたシミュレーションや検証を実施する。そのため、建ててから設計上の問題点に気づく、ということを避けることができる。

 冒頭でも触れたとおり、2次元の図面上からは、建物の柱・梁やダクト・配管などがどのようにお互い干渉しあっているかが見えにくいほか、建物の周辺環境を踏まえた日当たりなどについても予測が難しい。こうした設計段階に潜む問題点を3Dモデルを通じて確認することで事前に改善することができるのだ。

 こうして、初期段階で負荷をかけて事前に設計の見直しや問題点の改善を図る、いわゆる「フロントローディング」が可能になるのだ。

 近年は、短工期でありながら、複雑な設計・施工を要することや、度重なる設計変更や施工中の設計変更による設計・施工ミスも散見される。竣工後あるいは竣工目前のタイミングでそれが発生した場合、設計・施工者に大きなダメージを与えかねない。しかし、BIMの活用によって、これらの事態を回避できる。
■企画・設計・施工・管理の情報を一元管理できる
 企画から施工・管理までの情報を一元管理できることも、BIMのメリットだ。これらのデータが連動しており、1カ所を修正すると、関連する全カ所の情報が自動的に反映される。これにより、大幅な業務効率化を実現するのだ。

 たとえば、3D CADで設計の修正が入ると、2次元の図面を書き起こして3D化、CG化する工程を辿らなければならない。BIMの場合は最初から3次元で設計し、3次元の形状情報から2次元図面を引き出して修正できるため、1カ所の修正で何枚も図面を引き直す必要がない。1カ所を修正すれば、数値や細かい情報まで反映され業務効率が向上する。
■業務効率化やプレハブ化がコストの削減につながる
 BIM導入によって業務効率化やプレハブ化が実現し、コスト削減につながる。

 BIMアプローチによって、設計段階で干渉面など問題のない設備の設計が可能になり、その結果、工場で設備一式を作成するプレハブ化が可能になる。

 プレハブ化は一括で部材を用意できるため、現場で個別に用意するケースと比較してコストを抑えられる。また、工場での作成は現場よりも修正や変更をしやすいことから、従業員の作業時間の軽減にもつながり、人件費の削減効果が見込まれる。
■工期が短縮する
 作業時間や工期が短縮することも、BIMを活用することで得られるメリットだ。BIMを使うことで設計ミスによる手戻りを未然に防ぎやすくなり、設計変更の回数を最小限に抑えられる。

 工期の短縮は、他社と差別化を図るための要素となる。依頼先として、複数の企業を比較検討している発注者に対して、工期短縮の実績を提示できれば受注できる可能性が高まる。

BIM登場の背景は? 今、どれだけ日本で普及してる?

 BIMは、海外では20世紀の終わりごろから使用され始めたとされる。背景にあったのは、建設産業の労働生産性の低迷だ。建築プロジェクトが複雑化し、さまざまな情報の一元管理や関係者間での共有が困難となったことが要因と考えられる。

 その後、2003年に「3D-4D BIM計画」を立ち上げた米国連邦調達庁(GSA)が、2007年以降は工事発注仕様書において3次元CADデータでの施設情報納品を義務付けた。これを機に、米国内でBIMの普及が一気に加速し、2012年の北米建築関係者のBIM活用実態調査では、BIMの普及率が70%に達したことが明らかになった。米国では、現在でも普及率が上昇している。

 またイギリスは、公共事業に対して2016年度までのBIM利用義務化を宣言し、フランスやドイツなどもBIM先進国である米国に追従している。

 一方、日本では、国土交通省が2022年に実施した「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査」によると、すでにBIMを導入している企業は48.4%だった。2020年の普及率は46.2%であったため増加傾向にあるものの、米国のBIMブームからすでに10年以上が経過していることを考慮すると、なかなか普及が進まない状況であることがうかがえる。 【次ページ】メリット多いが…日本でBIMが普及しにくい「4つの理由」
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