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名古屋で誕生したシンクタンク「The International Academic Forum」(以下、IAFOR)が開催した「IAFOR グローバルイノベーション&バリューサミット2018東京」において、前 文部科学大臣 林芳正氏が登壇。「Society5.0」に向けた日本の次世代教育構想について講演した。
リカレント教育の重要性が高まるマルチステージ人生
「教育分野において、日本のイノベーションはどうあるべきか」――。講演に登壇した前 文部科学大臣 林芳正氏はまず、日本社会が人生100年時代に入ったことに言及した。2007年に生まれた子どもの半数が何歳まで生きるかを予測した調査では、日本の子どもは107歳より長く生きると推計されている。
「人生100年時代が来ると、今までのような教育を受けた後に就業し、その後リタイアするといったシンプルな3階層モデルは合いません。教育を受けた後、単に企業に就職するというだけでなく、海外へ飛び出したり、教育を受け直して転職したりと、行ったり来たりしながらマルチステージの人生を歩むことになります」(林氏)
このようなマルチステージ人生には、繰り返し学ぶことを可能にする“リカレント教育”の仕組みが必要だと林氏は説く。
次世代人材に求められる「3つの力」
今後は、AI(人工知能)やロボットの台頭によって、ある種の仕事が置き換えられると予測されている。
オックスフォード大学が実施した「雇用の未来」調査によると、消滅するのは多大な知識の蓄積が必要な仕事や、AIやロボットがより得意とする定型作業的な仕事であるようだ。その逆に、残るのは企画立案や対人業務が必要な仕事であるという。
林氏は「来たる時代に仕事を獲得する上で重要なスキルは3つあります」と語り、こう続けた。
「一つ目が『計算・読解能力』、二つ目がチームで協業するための『コミュニケーション能力』、時には仲間を導く『リーダーシップ』も求められます。そして最後の一つが『感じる力』です。これは、自然や音楽の美しさを実感できる力だといえます。この3つのスキルは、辞書や教科書を暗記するよりもよほど重要で、私たちが次世代教育で力を入れたいことです」
「Society 5.0」時代、教育は“オーダーメイド”に
人生が100年に伸び、AIやロボットと共存しながら人が生きる未来社会、それは「Society 5.0」とも呼ばれる。「Society 5.0時代は、特に『教育の個人化』に力を入れるべきです」と同氏は言葉に力を込める。
「教育の個人化」とは、小学生から高校、あるいは大学まで生徒は単一の“通知表”を持ち、教師が「EdTech」などの支援も利用しながら、生徒に対して個別に学習の方向性を示すというものだ。
たとえば、「あなたは今の学年を終えるまでにもう少し追加学習が必要」「あなたは理解が進んでいるから、もう次年度分の学習を始めてもよい」といった具合だ。いわば“オーダーメイド教育”で、そこでは教師が生徒の成長を手助けするファシリテーター的な素養を身につける必要もある。
現在、文部科学省では、こうした教育変革を目的としたテストケースの実施に向けて、次年度予算を要求している。
(※本記事は「IAFOR グローバルイノベーション&バリューサミット」の講演内容をもとに再構成したものです。)
(執筆:吉田育代)
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