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  • 2015/12/10 掲載

伊藤園の好業績を支えるマーケティング 1本1000円のお~いお茶に勝算はあるか

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お茶をペットボトルで買う文化が浸透して久しい。健康志向も相まってお茶を買うことが当たり前になってきている。こうした中で、緑茶飲料市場においてトップシェアを誇る企業、伊藤園の2015年度4月期四半期決算が好調だ。通期利益予想を上積みして、5月~10月期の純利益が前年度比30%増の57億円。タリーズコーヒージャパンを子会社に持ち、飲料部門で快進撃する伊藤園のマーケティング戦略と、その収益の構造に迫る。
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伊藤園のマーケティングは成功するか?

伊藤園が前年度30%超の増益、その理由とは?

 好調な業績推移を反映して、決算を上方修正した伊藤園。連結の営業売上は2528億円、営業利益は前年比22%増の100億円を叩きだした。

 伊藤園前年度から見ると30%の純利益大幅増進で、前年度は47%ダウンだったことからして反転に転じた模様だ。売上高も2528億円と莫大なものであり、飲料マーケットの大きさを感じさせる。

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2015年第二四半期 伊藤園決算(前年との比較)
(決算発表資料から作成)



 主力のお~いお茶のブランドは崩れておらず、混入などの事故がなければ今後も堅調な推移を見せるだろう。

 伊藤園が好業績を挙げた背景にはいくつかの要因がある。長きにわたって培ってきたマーケティング力、時間をかけて国内の需要を確実に広げたこと、現在国際化に伴って外国人のインバウンド需要、子会社であるタリーズコーヒージャパン(以下、タリーズ)の躍進などだ。

トップシェアを誇る「お~いお茶」、伊藤園が取り組むマーケティングの秘密

 では、どのような戦略でこの売上と純利益を達成していっているか見てみよう。重要なのは、伊藤園の緑茶飲料「お~いお茶」が長きにわたってトップシェアを獲得してきたという点だ。1980年代にお~いお茶が発売された頃は、まだ市場には買ってまで緑茶を飲むという文化自体がなかった。だがもともと、緑茶自体の消費量はコーヒーや烏龍茶よりも多かった。

 そこで缶やペットボトルに力をいれてマーケットを開拓し、それまで急須や煮出しで飲むのが最も美味しいと思われてきた日本人のお茶に対する価値観をひっくり返した。

 もともと緑茶自体の消費量は多かったので、それを”買ってまで”飲むという新しい価値を生み出したのが伊藤園のマーケティングの勝利だ。その後も手頃な価格と高い品質で、「伊右衛門」や「生茶」などのブランドひしめく緑茶市場で、お~いお茶は40%ものシェアを獲得している。圧倒的勝利をおさめている。

 そして缶やペットボトルの比率が増えるに連れて、緑茶の消費量そのものも増え、マーケット自体が拡大していったのだ。それにしたがって伊藤園の売上も上昇している。2000年には、容器と中身を改良してホット専用のお~いお茶を開発するなど、新規開拓にも余念がない。これによって緑茶は年間を通じて飲まれる飲料へと成長したのだ。伊藤園は安定した収益を叩き出すようになった。

訪日外国人のインバウンド需要

 外部環境として挙げられるのが、お茶は日本独自の文化として、海外からも熱い注目を浴びている点だ。特に高級路線が人気で、伊藤園はここに来て一気に高級路線のラインナップも投入。英語表記などを当たり前にして、外国人需要の高まりに答えている。

 実際、売上は好調で、ライバルのネスレのキットカット抹茶味は飛ぶように売れているが、伊藤園の高級路線のお抹茶や緑茶なども良く出ている。

 格安路線でも、百円均一に低価格路線の緑茶が並ぶなど、チャンスを逃していない格好だ。外国人は、特別なクオリティの高価格なものを好む欧米人と、百円均一などで家族や友人に大量におみやげを購入したいというアジア人の両方のニーズがある。

 伊藤園はそのどちらも取りに行っており、高価格と安価な路線の両方でインバウンド需要を取りに行っている。訪日外国人は近い将来2000万人を突破するだろうと言われており、まだまだこのジャンルは伸びていく市場だ。緑茶は日本独自の文化なので、クールジャパン需要の中でも強いアイテムだ。緑茶という新たな飲料と外国人の出会い、そしてその手作りの繊細さに日本的なものを見出す外国人の感性が相まって、今後も強い需要を形成するだろう。

【次ページ】1本1000円の「お~いお茶 玉露」は売れるか?
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