• 2009/12/16 掲載

「2009年から2010年にかけて大きな断層をまたぐ」2010年の国内IT市場の主要10項目--IDC Japan

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IDC Japanは、2010年における国内IT市場でキーとなる技術や市場トレンド、ベンダーの動きなど主要10項目を発表した。まず2010年の見通しについて、経済と国内政治情勢の不透明感から、企業は国内の投資全般に慎重な姿勢を継続していると分析。一方で投資抑制が仮想化やクラウドへの移行を加速させるとした。また、IT分野に起ころうとしている仮想化やクラウドの流れも、これまでとは次元の異なる競争ルールへの移行が必定とし、しかもそれぞれが相乗的に相手の変化を加速させているという。

1. 国内IT市場は2009年に大幅縮小し、2010年はきわめて低い成長率に留まる
2. 仮想化の対象がストレージやネットワーク機器にも拡大し、ITインフラの統合管理ツールへの需要が本格化する
3. クラウド上でのシステム/アプリケーション開発環境が整い、クラウドへの流れが加速する
4. 新政権による政策の追い風を受け、地球温暖化防止に向けたITの利活用が本格化する
5. スマートグリッドへの取り組みなど、社会インフラ向け大規模システム開発が新たなテーマとして浮上する
6. 高速無線データ通信サービスの開始によって、消費活動に連携したアプリケーションの多様化が進む
7. パンデミックへの対応を契機に、ユニファイドコミュニケーションの本格導入が始まる
8. クラウドへの対応が新たなハイブリッドセキュリティ対策需要を喚起する
9. システム開発のグローバル化と、国内SI事業の再編が加速する
10. 市場分析/経営分析ツールが注目を集め、BI/BA市場が急拡大する


 IDC Japanは、2010年における国内IT市場でキーとなる技術や市場トレンド、ベンダーの動きなど主要10項目を発表した。まず2010年の見通しについて、経済と国内政治情勢の不透明感から、企業は国内の投資全般に慎重な姿勢を継続していると分析。一方で投資抑制が仮想化やクラウドへの移行を加速させるとした。また、IT分野に起ころうとしている仮想化やクラウドの流れも、これまでとは次元の異なる競争ルールへの移行が必定とし、しかもそれぞれが相乗的に相手の変化を加速させているという。

 IDC Japanは、世界最大手の米債券運用会社ピムコのCEO、モハメド・エラリアン氏が提唱し、主に米国の経済関係者の間で広まった「ニューノーマル」という言葉で表現される時代に突入するとして、「2009年から2010年にかけて起こることは、大きな断層をまたぐことに等しい」と、その変化を指摘している。

 今回IDC Japanが取り上げた10項目とその内容は以下の通り。

1. 国内IT市場は2009年に大幅縮小し、2010年はきわめて低い成長率に留まる

 2008年後半~2009年に起こった不況の影響で、ユーザー企業のIT投資の削減はいっそう強化される。サーバー、PC、ストレージなどハードウェアの出荷は伸び悩んでおり、ハードウェアへの投資を抑えるユーザー企業は、ソフトウェアやITサービスへの投資額についても削減努力を続け、ベンダーへの価格引き下げの圧力は強まっている。特に、2010年については、2009年に起こった急激なビジネスの変化を意識し、より戦略的にITへの投資抑制を検討するという。

 このように、ユーザー企業の動きが変化すると、サービスプロバイダーやシステムインテグレーターの競合も激しくなり、受注を優位に進めるため、価格競争が起こる可能性が高いという。中国やインドなどオフショアサービスとの競合が増加。ソフト開発やシステム管理の技術力を持つサービスプロバイダーや、データセンター業者は、有償のソフトウェアの代わりにオープンソースソフトウェアを使うことで利益確保に努めている。こうした動きがさらに加速されれば、ソフトウェア開発費やサービス価格の低下、つまり出荷金額規模の減少につながる。これらの負の連鎖が2010年のIT市場拡大を阻害する大きな要因になるとIDCではみている。

2. 仮想化の対象がストレージやネットワーク機器にも拡大し、ITインフラの統合管理ツールへの需要が本格化する

 サーバーの仮想化が進むにつれ、ストレージやネットワーク機器を含めたさらに広範囲のプラットフォームに対する運用管理の必要性が認識され始めた。これまでは、ネットワーク、ストレージ、サーバーに対してそれぞれ異なった運用管理ソフトウェアを使っていることが多く、一元的に管理することが難しかった。これらを仮想的に統合した管理を行い、さらに、ネットワーク上の障害切り分けや、パフォーマンス監視、負荷分散など統一した管理体系や手法を適用することで、効率や可用性が高まる。

 もう1つの仮想化の発展形態は、これまで進められてきたx86サーバーなどオープン系サーバーをベースとした均質なシステム環境と同時に、メインフレームなど非オープンなシステムを包含する管理ツールの実現である。2010年には、仮想化の対象となるハードウェア製品の多様化と、システム管理技術の提供ベンダーの多様化が進むであろう。一方で、これまでソフトウェア、ストレージ、ネットワークなどに特化してきたベンダーが、総合ベンダーが強みを持つ垂直統合の分野で、仮想化技術を武器にビジネス機会を取り込もうとする動きも見られる。これはそのままクラウド基盤を巡る覇権争いにつながっていくであろう。

3. クラウド上でのシステム/アプリケーション開発環境が整い、クラウドへの流れが加速する

 現在、クラウドサービス市場では、仮想マシンやストレージの高度な運用管理、アプリケーション開発環境が急速に拡充している。特に、クラウドサービス上でのアプリケーション開発環境は、ベンダー間のシステム/アプリケーション開発者の囲い込み競争が激化した。システム/アプリケーション開発者の囲い込みは、製品/サービスの競争力に直接的につながる。2010年は、クラウドサービスベンダーやテクノロジーベンダーによる開発者囲い込みが激化するとIDCはみている。そして2010年は国内と海外の主要なITベンダーからプライベートクラウドをサポートする製品が発表されるであろう。

 開発されたアプリケーションは、将来的にはサービスとしてのアプリケーションが蓄積されるとともにサービス間連携も容易となり、専門家を必要とせず、エンドユーザーが直接既存サービスを組み合わせて業務に必要な利用環境を組み立てるプロシューマー開発も可能となるであろう。クラウドの発展と共に、従来のシステムインテグレーション、ソフトウェア開発のビジネスモデルの崩壊が予見される。

4. 新政権による政策の追い風を受け、地球温暖化防止に向けたITの利活用が本格化する

 日本の2006年の年間CO2排出量は約12億トンであり、IT技術を最大限に活用できた場合の2020年の排出削減量は最終的に4.3億トンと試算されている(IDC2009年12月発行『Reducing Greenhouse Gases Through Intense Use of Information and Communication Technology: Part 1(IDC #DCWP31R)』)。一方、鳩山首相が、国内の温室効果ガスを1990年比で2020年までに25%削減することを目指すと国連総会などで明確にしたことによって、この問題に対する取り組みは加速されることになるとIDCではみている。ITベンダーにとって、グリーンITへの対応姿勢が顧客獲得に向けた付加価値となるばかりでなく、エネルギーにかかるコストを削減し、価格競争力や排出権取引を有利に進めることになる。

 地球温暖化防止に向けた取り組みの中で、直接的および間接的にITが大きな影響力を持つことは明白であり、ITベンダーはもちろん、それを利用するユーザー企業も高い関心を持っている。IT機器自体やデータセンターのエネルギー効率改善とは別に、温暖化の実態を把握し、対策に対する効果を測定するために、幅広い産業や地域でセンサーを設置し、監視や分析を行うプロジェクトが計画されている。2010年は、国内においても地球環境の課題に対するITの積極的な利用に踏み出す重要な年となるとIDCではみている。

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