• 2009/12/16 掲載

「2009年から2010年にかけて大きな断層をまたぐ」2010年の国内IT市場の主要10項目--IDC Japan(2/2)

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5. スマートグリッドへの取り組みなど、社会インフラ向け大規模システム開発が新たなテーマとして浮上する

 温室効果ガス削減への取り組みは、太陽光発電など石油や石炭などの化石燃料に代わるエネルギー資源の開発を促進する。従来の大規模発電所と電力の消費地である都市や工場地域を結ぶ高圧の送電システムについても、送電によるロスや消費電力の変動に対応する最適な発電制御を行うことで、エネルギー効率の改善が可能とされている。2010年は、スマートグリッドに向けた大規模なプロジェクトが動き出す。

 社会インフラ全体に関わる大規模なシステム全体をきめ細かくリアルタイムに制御し、負荷を平準化したり災害などの突発的な事態に柔軟に対応できるシステムの構築など、一企業や行政単位を超えた大規模なシステムの必要性が議論されている。こうしたシステムの開発は、幅広い業種の企業や政府との連携が必要であり、ITベンダーが大きな役割を果たすことが期待される。

6. 高速無線データ通信サービスの開始によって、消費活動に連携したアプリケーションの多様化が進む

 NTTドコモが2010年末にLTE(Long Term Evolution)によるサービスの開始を明確にしたことにより、高速データ通信が新たな段階に突入したといえる。Wi-Fiに比べ広いカバレージと、すでに定着している携帯電話の利便性に対して、機能の追加あるいは強化につながる点が評価されている。

 携帯電話とPCとの間でのコンテンツや情報の共有が進み、個人だけでなくビジネスの分野でもアプリケーションの透過性が高まると期待されるため、アプリケーション開拓の動機は強まる。また、通信事業者の期待はデータ通信の増加による収益の増加であり、こうした方向を加速させるためにも、サービスの開始に先立ってアプリケーション開発者に対するサポートを強化するであろう。これが促進剤となって、消費者の利便性や、経済行動をサポートするなど、高速無線通信の効果を引き出すアプリケーションの開発プロジェクトが、2010年には本格的に立ち上がるとIDCではみている。

7. パンデミックへの対応を契機に、ユニファイドコミュニケーションの本格導入が始まる

 音声とデータを共存させるUC(ユニファイドコミュニケーション)について、2009年時点での利用の実態は、非常に限定されたものである。一方、2009年には新型インフルエンザの脅威が現実の問題となり、2009年11月末の段階で国内感染者数は累計で1,000万人を超えると推定されている。こうした状況でビジネスの継続性を保つためには、オフィスへの出社を前提としない勤務形態の実施が避けられない状況にある。在宅による勤務の必要性が改めて高まり、これを実現するための環境の整備が検討される。

 2010年には、パンデミック対策への対応手段として、音声、データ、ビデオを統合したUCシステムによるモバイル業務遂行環境への関心が高まり、同時に、社内情報の外部からのアクセスポリシーの作成や情報アクセス管理などの本格的な検討と導入が始まる。

8. クラウドへの対応が新たなハイブリッドセキュリティ対策需要を喚起する

 クラウドや仮想化に伴い、情報システムには新たなネットワーク境界ができる。仮想ネットワークの境界、オンプレミスとクラウドの境界である。こうした情報システムプラットフォームと所有形態の組み合せが増加することで、新たなセキュリティ課題とソリューション需要が喚起される。クラウドの具体的なソリューションとしては、各ベンダーのシングルサインオン製品がオンプレミスとクラウドのシステム間連携に対応する。

 IDCの調査では、不況で投資の厳しかった2009年でも、マネージドセキュリティサービスの利用において増加傾向が見られた。この傾向は2010年にも続き、クラウドサービスとオンプレミスシステムを必要に応じて組み合わせる、複合的なセキュリティソリューション利用が増加する。これに加えてサーバー仮想化の進展に伴い、仮想化環境で動作する仮想セキュリティアプライアンスも加わり、複数の所有形態、プラットフォームを組み合わせたハイブリッドセキュリティソリューションの導入が始まるとIDCは予測する。

9. システム開発のグローバル化と、国内SI事業の再編が加速する

 国内企業のITは、システムの個別開発の比率が高く、ネットワークの利用と経済およびビジネス環境のグローバル化が始まるまでは、国内のITシステムは有効に機能していた。しかし、こうしたネットワーク化以前に構築したシステムや、その開発の進め方を、それ以降に必要とされるオープンで柔軟性に富むシステムに適用しようとすることはきわめて高いリスクを負うことになる。ビジネスのリアルタイム性とグローバル性が求められる状況の中で、独自システムの開発や維持管理は難しく、標準化されたシステム構築と、部品化された「サービス」を組み合わせて、変化に応じてダイナミックに対応できるシステム構築を行うことがより重要になる。

 オープン系のシステム開発や、金融系など特定の業務に豊富な経験を持つインドや中国でのオフショア開発も特別な存在ではなくなりつつある。さらに、システムの所有からサービスとしての利用への移行も一般化している。SaaSやクラウドサービスの本格的な展開は、その選択肢をさらに広げることになる。経済のグローバル化に伴い、発注者であるユーザー企業そのものが、日本国内から海外に拠点を移し、業務の絶対量が減少の方向にあることである。国内に事業の基盤を置き、従来の個別システム開発を主体とするシステムインテグレーターの多くは、その事業モデルの再構築を迫られることになるであろう。

10. 市場分析/経営分析ツールが注目を集め、BI/BA市場が急拡大する

 市場動向のリアルタイム把握、動的な価格設定など、競合他社との差別化を実現できる市場分析ツール(BI/BA:Business Intelligence、Business Analytics)の利用に関心が高まっている。金融や通信事業者での利用実績が先行しているが、2010年には流通や製造、サービスなど他の業種への拡大が進むであろう。分析ツールが高い注目を集めるようになった背景には、経済環境と消費行動の変化と同時に、分析対象になるデータの自動収集が実現したことと、高速データ通信による低価格での利用が可能になったこと、Webアプリケーションによる分析結果へのアクセス性向上がある。

 2009年に入り、データベースエンジンと分析ツールを搭載した専用ハードウェアのパッケージ化された製品が登場し、従来の大規模データベースと検索ツールの組み合せに比べ破壊的に安い価格で提供されるようになった。この結果、2010年の市場には複数の変化が起こる。分析ツールを提供するベンダー間で、顧客獲得のための競争が激化する。分析ツールの導入障壁が低くなったことで、ユーザー企業の導入が本格化する。分析ツール導入企業の優位性が明確になり、未導入企業の業績を左右する。


 今回の発表はIDCが発行したレポート「Japan IT Market 2010 Top 10 Predictions: ニューノーマルに直面するIT市場」(J10990181)にその詳細が報告されている。本レポートでは、IDC Japanの調査グループごとに発表した「Top 10 Predictions」の中から、日本市場全体に重要なインパクトを与える項目10件を抽出し、2010年の市場概況とIDCの見解を提供している。

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