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- 2009/05/29 掲載
クラウドにも弊害?NGNとIPv6インターネットが併用できないマルチプレフィックス問題とは--東大 江崎浩氏
東京大学大学院 情報理工学系研究学科 教授 江崎浩氏
IPv6ではNGNとインターネットは接続できない
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日本国内でNGNは、NTTグループのブランドのような印象がありますが、国際的に見るといくつかの団体によって標準化が進められています。代表的なのは欧州の標準化団体「ESTI(European Telecommunications Standard Institute)」が「TISPAN(Telecommunications Internet converged Services and Protocols For Advanced Networking)」において標準化を進めています。日本では、2005年12月に「次世代IPネットワーク推進フォーラム」が設立され、標準化に向けた取り組みが行われています。
日本では実態として、NGNは安心で高速、高品質というブランド・イメージがあり、「上手に運用されたIPネットワーク」のことを指しています。
──とはいえ、そのNGNが進んでいない印象もあります。
NGNは、日本ではNTT東日本とNTT西日本が提供する閉じた形のネットワーク(閉域網)であり、「ネットワークの中立性」が問題となっています。この「ネットワークの中立性の問題」というのは、NGNと、開域網であるインターネットとの接続がスムーズに行われない「マルチプレフィックス問題」を指しています。
──マルチプレフィックス問題とはどういうことでしょうか?
NTT東西のNGNは、IPv6による閉域網であり、開域網であるIPv6のインターネット通信を併用しようとすると、企業も家庭も、NGN用とその他インターネット用の2つのIPv6アドレスを持つ必要が起きてきます。IPv6アドレスを2つ持つと、大きく分けて2つの問題があります。1つは「経路選択問題」です。NGNに送るべき通信パケットを、インターネット網に送ってしまったり、逆にインターネット網に送るべきパケットをNGNが受け取ってしまうことになります。2つめが、「送信元アドレス選択問題」です。これは、自分の住所が2つある状態で手紙を送るため、相手が返信しようとした際に、返信の内容が自分に届かない可能性がある問題のことです。
2008年2月にはNTT東西のNGNを利用したフレッツサービスが認可されましたが、この「マルチプレフィックス問題」を解消しないと、将来問題が起きることが懸念され、総務省は認可に条件を付けています。今後、NGNとISP(インターネット サービス プロバイダ)の提供するインターネット網、つまりクラウド・コンピューティングの利用網を使い分けるニーズが出てくることが予想されますが、現在は対応できていないのが実情なのです。
──となるとNGNは、他のインターネットサービスやクラウド・コンピューティングを利用する上で問題があるということなのでしょうか…。
そのために、総務省は2008年2月にNTT東西のサービス認可に際して、ISPとの接続や扱いに対して公平に取り扱い、技術的インターフェースなどの共通化について十分話し合いを行うように条件を付けたのです。
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