• 2008/09/29 掲載

【セミナーレポート】ビジネスの成長に必須な基幹系システムの未来予想図 今とるべき対策とは?

2008年10月3日(金)開催 「WebOTX WORKS DAY 2008」

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サブプライムローンを発端とする米国金融危機をはじめてとして、企業を取り巻く経済環境は不透明感を増している。加えて、内部統制や四半期決算の義務化などの法制的な環境変化、ITの急速な進歩にともなうテクノロジー的な変化など、さまざまな変化への対応を迫られる結果、多くの企業が、従来の基幹系システムの限界を認識し始めている。変化に対し柔軟かつ迅速に対応できる基幹系システムの要件とは何なのか。具体的なソリューションは存在するのか。NECが主催するセミナー「WebOTX WORKS DAY 2008」で、その答えを探ってみた。

これからの基幹系システムに求められるのは堅牢性に加えて柔軟性・俊敏性 そのカギがSOA



栗原潔氏

テックバイザージェイピー(TVJP)
代表取締役
弁理士
栗原潔氏

 イベント冒頭の基調講演に立ったテックバイザージェイピー 代表取締役の栗原潔氏は、『成長ビジネスのための次世代基幹系システムの提言』と題したセッションを行った。

 栗原氏はまず、従来の基幹系システムが「堅牢性を求めるあまり、柔軟性と俊敏性を失っている」と指摘。変化の少ない時代には、時間をかけてよいシステムを作ることに意味があったが、現在のような変化が激しい時代には、100%のベストのソリューションではなく、グッドイナフなソリューションを短期間で開発し、作ったあとで柔軟に変更できることが重要だと強調した。
 ただし、情報システムが社会に与える影響も大きくなっているため、堅牢性はさらに重要になっているとも強調。柔軟性・俊敏性と堅牢性の両立が重要だと説いた。

 「柔軟性・俊敏性と堅牢性の両立は、一見、難しく思えるが、次のような要件を満たせば実現可能である。第一は適切に集約された業界標準のハードウェアを使うこと。第二は実績があり、ある程度「枯れた」ソフトウェア基盤を利用すること。第三はビジネスに合わせて運用プロセスを柔軟に変えられること。第四は適切に部品されたアプリケーションを利用することだ」(栗原氏)。

 そして、アプリケーション部品化のためのキーワードとして「SOA」を取り上げ、その定義からSOAによるシステム構築手法、従来のシステム構築手法との違いなどが詳細に語られた。

 「SOAでいうところの『サービス』とはソフトウェアの部品を指す。業務のサブプロセスに対応する部品を作ることで開発生産性が向上し、システムを変更する際に、部品だけを変更すれば対応できる。その結果、変更の影響が局所化され、変化に対して柔軟かつ俊敏に対応できるようになる」(栗原氏)。

 ブログ、Wiki、SNSなどのWeb2.0系のコラボレーション・テクノロジーを企業内で活用しようとする考え方「Enterprise 2.0」にも言及。今後は、Enterprise 2.0的なテクノロジーが基幹系システムでも重要になるだろうと語り、将来的には基幹系、情報系、コラボレーション系の各システムの融合が進むことで、基幹系システムにおいても、クラウド・コンピューティングがポートフォリオの選択肢となるだろうという未来予想が示されて、セッションを終了した。

WebOTXとパートナーソリューションが柔軟で俊敏な次世代基幹系システムを実現する


久保田卓見氏

NEC
第二システムソフトウェア事業部
グループマネージャ
久保田卓見氏

 続いての基調講演は、NEC 第二システムシステムソフトウェア事業部 グループマネージャ 久保田卓見氏が『次世代基幹系システムを実現するIT基盤の革新~WebOTXとパートナーソリューションの果たす役割~』と題して講演を行った。
 久保田氏は、冒頭で「最も強い者が生き残るわけではなく、最も賢い者が生き残るわけでもない。唯一、変化できる者が生き残るのである」というダーウィンの言葉を引用し、現在の企業が直面している事業環境の変化をチャンスととらえ、ビジネスモデルを変革していくことの重要性を強調した。
 さらに、そこで必要とされるIT基盤には、「高信頼性」「柔軟性・俊敏性」「高速・大量処理」「安全性」の4つの要件が要求されると語り、以上のIT基盤の革新を支えるサービス実行基盤として、NECのWebOTXが存在すると説明した。

 「WebOTXは1998年にリリースされて、約10年の歴史を持つ。2008年にはJava EE5、SOA、NGN等の最新技術に対応した最新版のV8.1がリリースされている。アプリケーションサーバーとサービスインテグレーションの領域に加えて、RFIDサービスや音声認識・音声合成などのさまざまなサービスコンポーネントまでを提供する業務アプリケーション構築のためのサービス実行基盤となる」(久保田氏)。

 ただし、WebOTXはあくまで基盤にすぎないとも強調。「IT基盤の革新を進めるには、パートナーの連携が非常に重要である」と語り、WebOTXを技術基盤として採用しているパートナーを販促・技術面でサポートするプログラム WebOTX WORKSの重要性が説かれた。

 セッション後半には、NECが目指すSaaSビジネスにも言及。冒頭のセッションで栗原氏が述べた基幹系システムにおけるクラウド・コンピューティングの可能性に触れ、今後は基幹系システムにおいてもSaaSの活用が進み、所有型/利用型を柔軟に組み合わせたソリューションが増えていくと分析。それに伴って、NECおよびパートナーのSaaSビジネスを支える基盤の中核として、WebOTXが果たす役割がますます重要になっていくだろうと語った。

将来のあるべき基幹系システム実現に向けたWebOTXを基盤とするパートナーソリューション


小島 英揮 氏

アドビシステムズ
マーケティング本部
エンタープライズ&デベロッパーマーケティング部 部長
小島 英揮 氏

  休憩をはさんで後半は、将来あるべき基幹系システムを実現するため、WebOTXを基盤とするソリューションの可能性や具体的な事例が紹介された。

 トップバッターとなったアドビシステムズ マーケティング本部 エンタープライズ&デベロッパーマーケティング部 部長 小島英揮氏による『RIAとドキュメントプロセスの融合で革新するビジネスコミュニケーション~Adobe LiveCycle ESご紹介~』では、WebOTXと同社のPDFやFlashなどのテクノロジーの組み合わせが、業務アプリケーションにもたらす革新について語られた。

 まず、同社のAdobe LiveCycle ESが、PDFとFlashを組み合わせた業務アプリケーションのサービスプラットフォームであり、WebOTXを基盤とすることで高い信頼性と可用性を実現していることが説明された。そして、Adobe LiveCycle ESで業務アプリケーションを構築することにより、リッチで信頼性の高いビジネスコミュニケーションが実現可能であることが説かれた。

 事例として、CADの3DデータをPDFにコンバートして活用したり、PDFドキュメントを勤怠管理のフロントとして活用したりするソリューションが紹介され、参加者の注目を浴びていた。

 さらに、DRM(Digital Rights Management)技術によって一定期間が過ぎると表示できなくなるPDFドキュメントなど、セキュリティ面の説明が行われ、ブラウザを使わないで、Flash、PDF、HTMLアプリケーションの操作ができる環境AIR(エアー)で実現できる脱ブラウザのメリットも語られた。

 FlashやPDFの活用によるまったく新しい業務アプリケーションの可能性が実感できたとともに、今後の大規模なRIA展開においては、それを支えるWebOTXの高い堅牢性と柔軟性が重要なポイントとなることが確認できた内容であった。



玉田 徹 氏

セゾン情報システムズ
営業本部 HULFT営業部 営業支援課 課長
玉田 徹 氏

 続くセッション『WebOTX ESBとHULFTによるシステム間データ連携』では、セゾン情報システムズ 営業本部 HULFT営業部 営業支援課 課長 玉田徹氏により、WebOTX ESB(Enterprise Service Bus)とHULFT(ハルフト)を組み合わせたシステム間データ連係について、技術的な詳細が語られた。

「HULFTは当社が開発したファイル転送のミドルウェアである。さまざまなプラットフォームに対応し、固有の暗号化機能によりセキュリティ面での評価も高く、導入企業数は5800社以上の実績を持つ」(玉田氏)。

 セゾン情報システムズでは、このHULFTとWebOTX ESBを組み合わせてさまざまな実証実験を実施。その結果、既存システムにほとんど手を加えることなくデータ連係できることが確認できたと言う。その意義について、玉田氏は次のように語った。

「フロントエンドに高機能なシステムを導入したくても、バックエンドにレガシーシステムが存在するため、システム全体の刷新がなかなか進まないという状況は、どの企業にもある。こうした状況を前進させるは、フロントエンドとバックエンドをつなぐ仕組みが必要になる。WebOTX ESBとHULFTの組み合わせは、既存システムに手を加えることなくシステム間の連携を実現する手段として、非常に有効であることが確認できた」(玉田氏)

 また、実際の導入企業の事例も紹介され、HULFTとWebOTX ESBの組み合わせが、レガシーシステムが足かせとなってシステム刷新に踏み出せない企業にとって、きわめて現実的で効果的なソリューションであることが説明された。



久木田 浩一 氏

NTTデータ イントラマート
マーケティング本部 副本部長
久木田 浩一 氏

 最後のセッションは、NTTデータ イントラマート マーケティング本部 副本部長 久木田浩一氏が登壇し、『著名企業1800社が導入した次世代Webシステム構築フレームワーク「intra-mart」』のタイトルで、同社のintra-martの紹介が行われた。

 intra-martは、アプリケーションサーバー、Webアプリケーションを構成するための部品群、開発ルール、実行ルールをまとめたWebシステムの構築基盤(フレームワーク)である。WebOTXに対応することで、オープンソースアプリケーションサーバに比べ、障害監視や運用管理等のシステム基盤面の機能が向上。高品質で大規模なシステムを短期間、低コストでの開発できる環境を実現し、国内では1800社を超える著名企業に導入される実績を持つという。

 事例としては、ERPのフロントとして利用される例が説明された。実際に、SAPを導入する企業の多くがアドオンをintra-martで開発することにより、コスト削減に成功しているという。現実に「SAPユーザー企業が利用しているWebフロントシステムの構築ツールとしては、intra-martがシェアNo.1の実績を持っている」ということだ。

 また、ワークフローモジュールを利用した全社規模の経費精算ワークフローの構築事例、グループ会社の業務システムと情報系システムの構築事例などが語られ、WebOTXとintra-martの組み合わせが、Webシステム構築フレームワークとして高い実力を持つことが語られた。



 今回のWebOTX WORKS DAY 2008では、堅牢性に加え、柔軟性と俊敏性を備えた基幹系システムを実現するサービス実行基盤として、WebOTXが高い信頼を得ていることが実感できた。また、WebOTXをベースとする多様なパートナーソリューションが具体的に語られたことで、問題を認識する段階からアクションという次の一歩を踏み出そうとしている参加者にとって、非常に有意義なセミナーであった。

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