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- 2024/09/26 掲載
JASRACは変わるべき?音楽市場で周回遅れ日本、経産省が「本気の報告書」で切り込むワケ
まず知っておきたい、「原盤権」と「(音楽)出版権」
経産省が今年7月に公表した「音楽産業の新たな時代に即したビジネスモデルの在り方に関する報告書」が、日本の音楽ビジネスはもとより、アイドル・アーティスト・アニメ・漫画などのファンダムにも深く切り込んだ内容になっているとして、大きな注目を集めている。同報告書は、CDが売れなくなったといわれて20年余りがたち、人口減少も続く中、音楽産業が拡大基調を取り戻すためにはより大きな市場、すなわち海外へ打って出るべきだと指摘している。
レポートを読み解く前に、音楽の市場がそもそもどのようなビジネスモデルで成り立っているのかを確認しよう。
CDやレコードといったモノを販売していた時代と変わり、現在の音楽は収益の源泉がどこにあるのか分かりにくいところがある。音楽をビジネスとして捉える上で重要な軸となるのは、「原盤権」と「(音楽)出版権」と呼ばれる2つの権利だ。原盤権は楽曲を制作した人(企業)が持つ権利であるのに対し、出版権は楽曲そのものに関する著作権にあたる。
アーティストが曲を作り、その歌唱・演奏を録音(レコーディング)するとする。編集作業などを経て完成した音源を「録音原盤」(マスターテープ)と呼ぶ。これを複製してCDなどとして販売されることになる。この録音原盤に発生する権利が「原盤権」だ。
通常、レコード会社やアーティストが所属する芸能事務所など、原盤制作の費用を負担した者が原盤権を持つ。他者がこの音源を無断で複製することを禁じる複製権や、無断でアップロードすることを禁じる送信可能化権などが含まれる。
一方、「(音楽)出版権」は、ざっくりといえば楽曲の著作権のことだ。作詞・作曲をした人が著作権を持つイメージがあるが、現実には、作詞者や作曲者など「著作者」がそのまま「著作権者」となるケースは多くない。一般的には、音楽出版社が著作者と著作権譲渡契約を結び、著作権者となる。音楽出版社は、曲をヒットさせるべくプロモーション(開発)したり、管理して作詞・作曲をした人の権利を守る役割を担っている。
音楽産業の変革、初音ミク・米津玄師・YOASOBIの台頭
経産省のレポートは、レコードやCDの販売を前提とした旧来の産業構造が時代にそぐわなくなってきているとの課題認識がベースにある。これまでレコード会社がCDを制作し、街のレコードショップなどへ独自の流通網で届けていた。プロモーション手法についてはライブのほか、テレビやラジオなどで流されるなどが主流だった。
こうした仕組みの中で、著作権の管理団体が一括して使用料徴収と分配を行ってきた。日本では多くの音楽出版社が、JASRAC(日本音楽著作権協会)に権利を預けている。JASRACはテレビ局のほか、演奏やネット配信などの利用者から使用料を徴収し、一定の手数料を取って著作権者に分配する。利用者にとっては、JASRACに問い合わせれば、散在している権利者をいちいち突き止めるといった手間を省くことができる側面がある。
現在ではデスクトップミュージック(DTM)が台頭し、音楽制作の前提は大きく変化した。これまで、レコード会社などが持つスタジオなど限られた環境でしか行えなかったレコーディング作業が、自宅のパソコンと専用ソフトを用いてかなり本格的にできるようになっている。「初音ミク」で知られるボーカロイド(ボカロ)によって歌唱までも操れるようになり、一般クリエイター出身者が幅広い支持を集めるケースが増えている。
この点について、レポートの中では以下のように言及されている。
「多様性」の土台の一つにボカロ文化がある。人が歌うことにとらわれない楽曲の多様性や、他者によるカバー等N次創作を前提とした文化が育まれた。Spotify、YouTube、TikTok等のグローバルプラットフォームが楽曲流通の中心となり、ボカロPや歌い手として活躍したクリエイター、アーティストが直接海外に打って出ている。そこからメジャーレーベルの目に留まり、メジャーデビューする道も拓かれてきた。こうした制作環境から出てきた代表が米津玄師であり、YOASOBIだ。自室で歌った音源の公開から世に出たAdoの例のように、自宅のPCやスマホからYouTubeなどで配信すれば瞬く間に世界へと届き、個人で収入を得られることも可能になった。 【次ページ】音楽消費のサブスクリプション化、海外に遅れる日本の課題
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