- 2007/05/10 掲載
【連載】NGNとは何か(2):ソフトバンクテレコムのNGN構想(2/2)
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図4 ネットワーク制御の自動化 ネットワーク制御を自動化することでユーザーはさまざまなサービスをシームレスに利用できる。 |
コンピューティングとネットワーキングを仮想化技術で融合させただけでは、必ずしもユーザーにとって使いやすいサービスとはなりえない。パソコンやサーバーといったコンピューティングリソースからネットワークを直接制御することによって、よりサービスと連携したネットワーク機能の提供が可能となる。これによりリアルタイム性の高いオンデマンドアプリケーションの活用が可能になり、高度なサービスとしての利用が可能になる(図4)。
例えば、音楽データをダウンロードサービスにおいて、アプリケーションが、自動的に音楽データのダウンロードに 必要なネットワーク種別とネットワークの帯域確保を行うことで、より快適なサービス提供が可能になる。本コンセプトを実現する新サービスとして「スマートVPN」と呼ばれるサービスの開発を進めている。
従来、企業ユーザーがVPNサービスを利用する場合、複数のVPNサービスを音声、社内LAN系、基幹業務系のようにアプリケーションごとに使い分けているケースが多い。 しかし、複数のVPNを運用することは、それだけユーザーにおけるネットワーク設計の複雑さ、保守運用コストの増大、障害時の対応遅延を招く結果となる。
この問題を解決すべく、我々のネットワークの中で機能別のVPNサービスを提供することで、複数の機能のVPNを使い分けながらもユーザーからは1つのVPNサービスを利用しているように提供するサービスを開発している。これがスマートVPNである。
スマートVPNでは、ユーザーの拠点におかれた「スマートCPE」と呼ばれる機器がユーザーの拠点のLANから流れてくるデータの種別を自動的に判別し、そのデータに最適なネットワークの帯域制御や、機能別VPNに自動的に振り分ける機能を持つ。これにより、ユーザーの拠点までのアクセス回線は1本で済み、複雑なVPNの組み合わせを行う必要がなくなる。
3.シームレスなユビキタス環境
ユビキタスという言葉はいささか使い古されてきた感じではあるが、現在通信事業者が提供するモバイル環境では完全なユビキタス環境とは言えない。ユーザーはそれらのサービスをすべて別々に契約し、場所ごとにそれらのネットワークに接続し直さなければならない。IRISでは、これらの使い勝手の悪いユビキタス環境をよりシームレスでユーザーが意識しないでその接続が維持されるようなサービスを考えている。そのために、これらのサービスを一括して認証、課金するシステムや、セッションの状態を維持するような仕組みをネットワークとプラットフォームの連携で提供する。
IRIS構想はよりユーザー指向なサービス提供を実現するために、特定の技術にこだわらず、標準化されたオープンな技術を適材適所的に使い分けている。
また、ソフトバンクテレコムだけではコンピューティングに関するスキルやノウハウが不足しているので、ITの高いスキルを持つ色々なパートナーとの連携、提携を中心にノウハウの相互乗り入れを検討している。
片山 武彦
ソフトバンクテレコム 研究所 担当部長 電気通信大学電気通信学部卒業後、1991年日本テレコム入社。大容量光通信システム、広域イーサネットサービス、公衆無線LANサービスなど幅広い分野の通信サービス開発を担当。2005年より次世代ネットワーク構想「IRIS」のプロジェクトリーダーとして活躍中。 |
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