• 2006/07/11 掲載

【NETWORK Guide】ネットワーク「改築」講座:Web高速化(3/4)

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岸部貞治 Kishibe Sadaharu
ネットマークス
品質基盤本部 
テクニカルソリューションセンター
研究開発グループ マネージャー
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次世代ネットワークソリューションの研究開発に従事。ネットワーク関連の新しい製品・技術を常にウォッチしている。ネットワーク業界はこれまで米国が技術を主導してきたが、最近は日米の市場性の違いが明らかになりつつあり、いつか日本から世界への技術発信に寄与したいと考えている。




 

 
    サーバ負荷分散・SSLオフロード・リバースキャッシュの3つの技術は、インターネット上のWebシステムで多く採用されている安定した技術である。しかし、常に成長し続けるWebシステムは、これらの技術だけで満足に対応しきれなくなってきた。そこで登場するのが、これから紹介する3つの技術である。

・TCPコネクション集約

 TCPはコネクション型のプロトコルであることから、クライアント数が増えるほどサーバに張られるセッション数は増える。数が増えるほど、TCPセッションの確立や終了にかかるサーバ負荷は増え、ときにはデータ転送の処理より重く、サーバ負荷の大半を占めることがある。これを解決する技術が「TCPコネクション集約」である(図4)。TCPコネクション集約とは、サーバとの間でHTTP 1.1[*4]のセッションを張り、各クライアントからのHTTPセッションをこのHTTP1.1セッションの一部として処理することで、TCPセッション開閉によるサーバの負荷を大幅に減らすことができる技術である。この技術は初めNetScaler(のちにCitrixが買収)によって紹介されたが、今では多くのベンダーがサポートしている。

TCPコネクション集約


・コンテンツ圧縮

 皆さんは、インターネットからファイルをダウンロードするときに、拡張子.ZIPなどが付加された圧縮済みのファイルを見かけることが多いだろう。テキストファイルなどは、圧縮することで大幅に容量を減らすことができる。これをHTTP通信に応用したのが、ここで紹介する「コンテンツ圧縮」である(図5)。Internet ExplorerやMozillaFirefoxなどの標準的Webブラウザは、あらかじめGZIPやdeflateなどで圧縮されたデータを伸張する機能を持っている。これを活用し、クライアントに送信する前にあらかじめデータを圧縮し、クライアント側のWebブラウザで元のデータに戻すことで、クライアントとの通信量を大幅に削減することができる。この機能も多くのベンダーによってサポートされている。

コンテンツ圧縮


・バッファリング

 ブロードバンドにおけるPCクライアントなどと比べて通信速度が速くない携帯電話などのクライアントでは、サーバとの間でデータ転送が完了しセッションが終了するまで、より長い時間がかかることになる。サーバはTCPセッションを継続する必要があるため、特に携帯電話向けサイトなどでは、これがWebサーバの負荷に大きな影響を与えてしまう。「バッファリング」は、サーバからのトラフィックをバッファリングし、サーバのリソースを早期に解放することで、サーバの負荷を減らすことができる(図6)。Redline Networks(のちにJuniperが買収)の製品が、この機能をいち早く実現した。

バッファリング


 上記で紹介した技術を実現する製品としては、以前からある負荷分散装置と、アプリケーションフロントエンドがある。それぞれの特徴を簡単に整理しておく。

・負荷分散装置

 サーバ負荷分散機能が中心となる。多くの製品は、SSLアクセラレーション機能を内蔵するか、オプションで追加選択できるものも多い。CiscoやNortel、Foundry、F5など、以前から負荷分散装置を取り扱ってきたような比較的大手のベンダーが中心となって提供している。

・アプリケーションフロントエンド

 Webサーバ群の前に置いてHTTPの処理を軽減させるものをこう呼ぶ。すでに負荷分散装置を導入済みのユーザーにアピールするため、そのほかの機能を中心に紹介していることもあるが、もちろん負荷分散機能を併せ持つものも多い。またそのほとんどはWeb(HTTP)機能に特化しているため、Webフロントエンドと呼ぶこともある。Juniper「DXシリーズ」や、Citrix「NetScaler」、Crescendo「Maestro」、Array Network「Array TMX」などがある。

 またCiscoは昨年7月、FineGround Networksを買収し、「AVS(Application Velocity System)」を日本でもリリースした。AVSはWebページを表示する際に、特定のサーバの処理負荷を軽減し、通信オーバーヘッドの最小化を行う機能を持つ非常にユニークな製品である。バックグラウンドでユーザーセッションの管理やデータ転送の最適化が行われるため、アプリケーションの遅延を最小化できる。


 実際のところ、両者に明確な定義があるわけではないので、まとめて「Web高速化製品」と呼ぶべきかもしれない。

>>>Webアプリケーションセキュリティ機能、Web高速化製品導入時の注意事項、製品市場動向
   
           
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