急成長「くらしのマーケット」が明かすCXの極意、なぜ“自己解決”を促すのか?
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「くらしのマーケット」に求められる出店者と利用者の両方のサポート
「くらしのマーケット」は、ハウスクリーニングやエアコン取り付け、引っ越しなど、さまざまな日常サービスをオンラインで比較して利用できるマッチングプラットフォームである。同プラットフォームを運営するみんなのマーケットの創業は2011年で、同年、1都3県でくらしのマーケットをリリース。その後、2016年に全国展開し、現在は登録業者数5万、200種類以上のサービスを利用できるプラットフォームへと成長している。同社 執行役員 兼 コンサルティング本部長 對馬 裕一氏は、次のように説明する。
くらしのマーケットでは、エアコン取り付けや庭木の剪定などのサービスを提供する事業者が「出店者」として登録する。そして利用者は登録された情報を比較検討してサービスを申し込み、利用後、出店者を評価する。このため、運営側は出店者と利用者の両方をサポートし、それぞれのCX向上に取り組む必要がある。
では、同社は具体的にどのような取り組みを行っているのだろうか。以降では出店者側、利用者側のそれぞれについて詳しく見ていこう。
出店者をサポートするコンサルティング本部の3つの役割
くらしのマーケットでは、出店者と利用者をサポートするうえで重視していることが2つあると、對馬氏は次のように説明する。「1つは出店者自身がサイトを活用できるよう、仕組みを作ること。もう1つは、当事者間で課題やトラブルを解決できる体制を作ることです。この2つを徹底することで、出店者は質の高いサービスを提供できるようになり、トラブルの発生率を軽減できると考えています」(對馬氏)
出店者をサポートするのがコンサルティング本部である。同本部の役割は「出店審査」「出店者へのコンサルティング」「品質管理」の3つだ。
「出店審査」は事業者およびサイトに掲載する情報を審査して出店の可否を判断する。「コンサルティング」は、サイトを活用して集客し、売上を伸ばしていくことを支援する。そして「品質管理」では、ルールに沿った運用が行われているかを日々、チェックする。コンサルティング本部では、こうした業務を行っているという。
出店者をサポートする際に重視しているスタンスは2つだ。1つは出店者と対等な関係性を構築すること。もう1つは、出店者自身のサイト活用の促進である。ただし、実際に活動するうえでは課題も多いと、對馬氏は次のように説明する。
「日々増えている出店店舗数を限られたメンバーで支援するには、いかに効率的に提案・フォローするかが重要になります。また、ITリテラシーやネット集客への理解度が高くない方も少なくありませんので、その対応も重要な課題となっています」(對馬氏)
すべてのステップでコンサルタントが丁寧にフォロー
事業者がくらしのマーケットで集客を成功させるためには5つのステップがあり、各ステップでコンサルタントが必要な支援を行う。ステップ1は「新規出店」だ。ここでは、出店者にサイト活用のガイドラインを理解してもらい、初期設定を行ってもらう。初期設定とは、自店舗サイトに掲載する写真の登録、価格設定などの最低限の設定のことだ。
次のステップ2が「オンライン講座」の受講である。
「オンライン講座では、集客方法や売上向上につながるノウハウ、ナレッジをまとめた動画を視聴していただきます。その後、動画で得た知識をもとに、自社のウリやお客さまに訴求したいポイントなどをワークシートにまとめ、そのうえでくらしのマーケット上にある自社店舗のサイトを編集していただきます」(對馬氏)
ステップ3の「ページレビュー」は、作成されたページが十分な水準に達しているかどうかをコンサルタントがチェックするフェーズだ。もしも水準に達していなければ、水準をクリアできるように必要な支援を行う。
そしてステップ4が「初予約獲得」だ。予約を獲得して初めて、出店者は顧客とのリアルのやりとり、口コミの獲得、次の集客につながる取り組みまでを体験することになる。
最後のステップ5「売上拡大」からは、別チームによる対応となる。具体的には、継続的なページ改善や新しい機能の活用を通じて競争力を強化する支援となる。
このようにくらしのマーケットでは、結果が出て出店者自身がサイトを活用できるようになるまで、コンサルタントが出店者に寄り添って丁寧に支援する。このため、いかに業務を効率化するかも重要な取り組みだ。
「数年前までは、電話への問い合わせ担当を配置し、1カ月で約160時間のリソースを割いていました。しかし、負荷が大きいため電話サポートを廃止して、メールだけに切り替えました。その際には、メールでの問い合わせが増えることは分かっていましたので、それを抑制するためにFAQシステムの『Helpfeel(ヘルプフィール)』を導入し、自己解決できる仕組みを構築しました」(對馬氏)
利用者の自己解決の仕組みを強化して、アクティブサポートを実践
出店者をサポートするのがコンサルティング本部なのに対して、サービス利用者をサポートするのがマーケティング本部のCSチームだ。同チームのチームリーダーである井坂 陽氏は、その役割を次のように説明する。同チームの基本方針は「当事者間解決」と「自己解決」だ。つまり、可能な限り出店者と利用者間での解決および利用者自身による解決を促す仕組み作りに取り組んでいる。一方で現実には、予約数が増えることに比例して問い合わせ件数は増える。さらに、利用者の行動が正確に測定できていないという課題も抱えていた。
「こうした課題を解決するため、Helpfeelを活用してFAQページを作り直しました。従来はFAQに掲載されているにも関わらず問い合わせが来ていたので、検索性を高めて回答を見つけやすくしました。さらに、メールと電話による問い合わせを廃止し、チャットに一本化しました」(井坂氏)
また、HelpfeelによりFAQ内でのページ遷移が分かるようになり、利用者の行動を分析できるようになった。その結果、FAQページの加筆・追加、利用者の動線に沿ったページ配置なども実現できたという。
「こうした取り組みの結果、予約数増加に対して、問い合わせ率は従来の1/3に減りました。その結果、浮いたリソースを口コミやTwitterにおけるサポート可能な投稿に対して、こちらから積極的に解決するアクティブサポート、メルマガやLINE、プッシュ通知、チャットを利用してリピート促進を行うCRM活動などに充てられるようになりました」(井坂氏)
くらしのマーケットにおいては、「CX向上=サービスの質を上げること」と定義したうえで、出店者と利用者の双方にさまざまなサポートが行われている。
ただし、すべての問い合わせに対応する体制を作るのではなく、可能な限り当事者間解決と自己解決を促し、業務を効率化しているのがポイントだ。そして、効率化したことで生まれたリソースで、こちらから働きかける“攻めのCX向上”を追求しているのだ。CX向上に取り組む多くの企業にとって、同社の取り組みには多くのヒントが含まれているといえるだろう。