「投資を伴うITコスト削減」には柔軟な投資回収期間の設定と総合的な議論が不可欠--あずさ監査法人 森本正一氏
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投資を伴わないコスト削減と投資を伴うコスト削減
「1つは短期的な視点で、目の前のコストを下げていく活動です。たとえば、システムの保守費を下げたり、予定している案件のいくつかを緊急性の観点から削ったりというように、『下げる』『削る』が基本となります。この場合、多くは期間を区切った短期的な活動になります。もう1つは、システムや運営の仕組みといったITに関する構造を変えることで中長期的にコストを下げていく活動です。前者は投資を必要としないケースが多いですが、後者は多くの場合投資を伴いますから、『投資を伴うコスト削減』と表現できると思います。」
たとえば、仮想化等で複数のシステム基盤を統合することや、販売管理や顧客管理のシステムをクラウドに移行したり、ITの運用管理業務をアウトソースしたりするケースが「投資を伴うコスト削減」ということになる。そして、投資を伴うコスト削減においては、「投資回収期間」を考えることが重要であると、森本氏は説明する。
「投資を伴うコスト削減は、先ほど申し上げたように、ITのコスト構造を変えていくことをねらっています。この場合は、コスト削減額、実現可能性、影響、リスクなどを考慮して回収期間を考える必要があります。」
ビジネスの目的に合わせた柔軟な投資回収期間の検討が必要
「投資回収期間について考えるには、そもそも何のためにコスト削減するのかを明確にする必要があります。企業経営者には、削減したコストを事業計画に反映し、利益に組み込むのか、あるいは新たな新規投資に回して成長を目指すのかといった目的があるはずです。つまり、削減したコストの使い道が、事業計画に組み込まれているはずです。そうすると、前提とするビジネスの形態によって、投資回収期間は異なってきます。たとえば、ジョイントベンチャーやM&Aなどの一定期間で終了することが前提のビジネスであれば、そのビジネスの期限の中で効果を出すことが求められるため、場合によってはシステムのライフサイクルよりも短い期限の設定が必要になります。また、、長期的に使用する基盤投資であれば、通常よりも長い期間を設定することになるでしょう。このように、投資を伴うコスト削減では、『いつまでにどれくらいの効果を出す必要があるのか、何の目的でコスト削減するのか』を明確にしたうえで取り組む必要があると考えます。」
減価償却期間やシステムのライフサイクルを投資回収期間として画一的に設定し、「そこまでに効果が出ればOK」とするのではなく、1つ1つの投資の目的を考えて、適切な投資回収期間を関係者で明確にしたうえで、意思決定の議論を進めることが重要なのである。