- 2024/08/26 掲載
焦点:FRB、大統領選前でも利下げ辞さない構え 雇用支援に重点
[ジャクソンホール(米ワイオミング州) 23日 ロイター] - パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は23日、年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で講演し、11月5日の米大統領選の数週間前に利下げを行うことも辞さない構えを明確に打ち出した。
議長は「政策調整の時期が来た」と述べ、9月17─18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを実施することを強く示唆した。インフレとの闘いが終わり、雇用の保全を最優先課題に据えたことを実質的に宣言する発言だ。
折しも米大統領選を巡っては、22日の民主党大会でハリス副大統領が大統領候補指名を受諾。対立候補である共和党のトランプ前大統領が優勢だった情勢が揺らいでいる。
トランプ氏と一部共和党議員は、FRBがこの時期に利下げすれば選挙日前に景気を潤し、民主党を有利にすることになると釘を刺してきた。
しかしパウエル氏や他のFRB幹部は、トランプ氏が大統領在任中に任命した幹部を含め、4週間ほど前から、インフレ懸念が和らいで雇用のリスクが増していることを示す経済指標に言及し、9月会合での利下げに向けて地ならしをしてきた。
FRBが選挙の年に利下げサイクルを開始するのは初めてではない。また、そうした年には与党と野党、いずれが勝利した例もある。ただ投票日の約7週間前の9月18日に利下げが実施されれば、少なくとも1976年以来で2番目に大統領選に近いタイミングでの利下げとなる。
1976年には、大統領選のわずか4週間前にFRBが利下げサイクルを開始。選挙では共和党の現職だったフォード氏を民主党のカーター氏が破った。
<手を尽くす>
FRBは物価安定と併せて最大雇用を維持する責務を担っている。失業率は過去1年間で3.4%から4.3%に上昇しており、パウエル氏らFRB幹部は利下げの根拠は十分だと判断している。
パウエル氏はジャクソンホールでの講演で、「労働市場環境がこれ以上冷えることを、求めても歓迎してもいない」と発言。インフレを根絶するために許容できる、あるいは必要な雇用減はあとどれくらいか、との問いに、初めて「ゼロ」という答えを出した形だ。
FRBが重視する物価指標、個人消費支出(PCE)価格指数の前年比上昇率は現在2.5%と、物価目標の2%を上回っているが、低下に向かっている模様。
パウエル氏は、FRBが「強い労働市場を支えるために手を尽くす」と述べた。一部アナリストは、この発言が25ベーシスポイント(bp)ではなく50bpの利下げに道を開いたと考えている。
利上げサイクル開始前に比べ、借り入れコストは明確に高まった。30年物固定住宅ローン金利は、2021年夏に3%未満だったのが、昨年10月には8%近くに上昇した。
それでも労働市場に目立った弱さは見られない。失業率は、利上げ開始直前の22年2月から今年5月まで4%未満にとどまっていた。1940年代以来の平均5.7%に比べて大幅に低い。賃金も上昇を続けている。
現在の失業率4.3%ですら、物価目標2%と長期的に整合的だとFRBが見なす水準に近い。ただ、パウエル氏が議長に就任した2018年に比べると高くなっている。同氏は、パンデミック前の雇用水準を取り戻したいと述べたことがある。
パウエル氏は、低失業率と物価安定は両立できるとの信念の下、物価安定よりも最大雇用に重点を置く方向に金融政策の枠組みを変えてきた議長であるだけに、これ以上失業率が大幅に上昇すれば実績に傷が付きかねない。
ただ、パウエル氏は今でも楽観的だ。今回の講演では「金融引き締めを適切に緩めていくことで、米経済は強い労働市場を維持しながらインフレ率を2%に戻せると考えて差し支えない」と説明。現在の政策金利水準は景気に逆風をもたらし、「中立金利」を大幅に上回り、2022年の利下げサイクル開始時から大幅に上昇している以上、「反応する(利下げを行う)余地が豊富にある」と語った。
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