- 2024/08/21 掲載
焦点:FRB、急激な失業率悪化に警戒 9月利下げ用意も
[ワシントン 20日 ロイター] - 国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」に集まる米連邦準備理事会(FRB)当局者は、失業率が4.3%と歴史的に見て低い水準を維持していることにある程度満足することはできるだろう。
だが1940年代後半以降のデータを見ると、失業率は長期平均の5.7%を下回ることが圧倒的に多いものの、その後急激に上昇して平均を大幅に上回る傾向がある。FRB当局者が懸念しているのは、この現象の再来だ。
足元でどのような傾向が生じつつあるのか、全貌は明らかになっていない。
失業率は昨年1月の3.7%から上昇傾向にあり、今年7月に4.3%に達した。ただこの間、求職者は120万人増加している。求職者の増加は通常、経済にとって明るい兆しだが、失業率の悪化にもつながり得る。
ここ数日、FRB当局者からは、労働市場が悪化するリスクを受けて利下げを実施する用意があることを以前よりも明確に示す発言が相次いでいる。
ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は最近の米紙ウォールストリート・ジャーナルとのインタビューで「リスクバランスが変化しているため、9月に利下げを行う可能性について議論するのは適切」と発言。
サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁なども、インフレ率が目標の2%に向かっていることに自信を強めており、利下げに前向きだと述べている。
FRBは来月17─18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で25ベーシスポイント(bp)の利下げを決定すると広く予想されている。パウエル氏も23日に予定しているジャクソンホール会議の講演で利下げ開始が近いとの見方を示唆するとみられる。
<もう一つの責務に配慮>
FRBは利下げが時間的に間に合い、これまで教科書通りに進んできた「ソフトランディング(軟着陸)」の総仕上げを行いたいと考えている。現時点では急激な失業率の悪化を招かずにインフレを抑制できているが、過去の金融引き締め局面ではいったん失業率の上昇が始まると、歯止めが利かなくなるケースが多かった。
インフレの抑制は劇的に進んでいる。FRBが注視する個人消費支出(PCE)価格指数は2022年6月に前年比7.1%でピークに達し、今年7月には2.5%まで鈍化した。
一方、最近まで2年間にわたって4%を下回っていた失業率は、今年に入りトレンドが変わりつつある。最近の雇用指標を見れば、なぜFRBが警戒を強めているのかが分かる。
7月の雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比11万4000人増と予想に届かず、3カ月平均では新型コロナウイルス禍前のトレンドを下回った。失業率は4.1%からは4.3%に悪化した。
加えて、前月比ベースのデータも芳しくない。労働力人口は差し引きで増えており、これは明るい変化だが、求職を始めてから仕事が見つかるまでの期間が長期化しているとみられる。また、就業者から失業者に移動する人も月間ベースで増えている。
とはいえ、失業保険の申請が劇的に増え始めているわけではなく、労働力人口の増加と歩調を合わせている。
個人消費は依然力強い。経済成長率も鈍化している可能性はあるがプラスを維持しており、FRBは労働市場が危機的な状況にあるとはまだ考えていない。そうした状況を回避したいというのがFRBの意向だ。
サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は18日掲載された英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のインタビューで、インフレが鈍化する中で高金利を維持すれば「われわれが望まない結果、つまり物価の安定と不安定で弱体化した労働市場をもたらす」と発言した。
また、シカゴ地区連銀のグールズビー総裁も同様の見解を示し、「過度な引き締めをあまりに長く続ければ、FRBの責務のうち雇用面で問題が生じることになる」とCBSに述べた。
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