- 2024/08/19 掲載
焦点:中国で「商品券」配布期待が再燃、7月経済指標悪化で
[北京 16日 ロイター] - 中国はまたも弱い経済指標の発表が相次ぎ、国内総生産(GDP)成長率を今年の目標である5%前後に戻すために政府は財政出動をさらに拡大し、商品券を配るべきだとする声が高まっている。
第2・四半期にさえない内容だった経済指標は7月に一段と悪化。新築住宅価格は前年比で約9年ぶりの大幅な落ち込みを記録し、鉱工業生産は伸びが鈍化したほか、輸出と投資の伸びも下振れ、失業率は上昇した。
その他の統計は予想を超えたが、前向きな理由ではなかった。インフレ率の上昇は内需拡大よりもむしろ天候不順が原因で、輸入の急増は米国のハイテク分野における対中輸出規制の導入を見込んだ半導体の駆け込み需要を反映していた。小売売上高も前年同期の水準が低かったため見かけ上、伸びが大きくなったに過ぎない。
7月の統計は総じて政策立案者の懸念をかき立てる内容で、当局者が成長の鈍化と消費者および企業の信頼感の下降スパイラルの可能性を受け入れない限り、景気刺激策を強化する可能性が高まっている。
UBPのアジア上級エコノミスト、カルロス・カサノバ氏は「現在の経済情勢は依然として目標に届いておらず、早急かつ大幅な政策介入が必要だ。政府は財政赤字の対GDP比目標を、計画の3%から変更し4%にせざるを得ないかもしれない」と述べた。
ある政策アドバイザーは匿名を条件に、もし夏に経済成長に底打ちの兆しが見られなければ、政府は10月に来年の国債発行枠の一部前倒しを決断するかもしれないと明かした。「そうしなければ景気の見た目は悪くなり、5%は論外だ」と述べたが、景気刺激策の対象分野について具体的な見通しは示さなかった。
中国は昨年10月にも同じような政策を採っている。財政赤字の対GDP比を3.0%から3.8%に引き上げ、洪水防止などのインフラ投資のために24年の地方政府の債務割当を一部前倒しした。
昨年と変わる可能性があるのは追加資金の使い道だ。
橋、道路、鉄道などに数十年にわたり資金を投入したことでインフラ投資のリターンは低下している。一方、政府が成長の原動力にしたいと考えている先端技術分野の製造業は、貿易摩擦を激化させ、生産能力過剰や生産段階におけるデフレへの懸念をあおっている。
ソシエテ・ジェネラルのアナリストチームは最新の経済統計について「中国経済は、その規模からして製造業と輸出だけでは成り立たない。5%の成長目標達成には――もしまだ目標を堅持しているならだが――政策立案者は内需のてこ入れを行う必要がある」とノートに記した。
<待望論>
消費者の財布のひもが固くなるにつれ、中国の電子商取引大手は買い物客を引きつけるために大幅な値引きや販促に頼らざるを得なくなり、小売セクター全体で利幅が圧迫されている。
国内ネット通販最大手のアリババ集団が15日に発表した2024年4―6月期決算は、消費の低迷により国内の販売が不振で、売上高が市場予想を下回った。
政府は7月に開いたトップレベルの政策会議で、消費者刺激策を段階的に導入する方針を打ち出した。この決定は、従来の政策が意図したように機能していないことを政府が公式に認めたことを意味する、というのがアナリストの受け止めだ。
国営メディアは11日からの週に、新型コロナウイルスのパンデミック時に米国などの国で導入されたものの、中国政府がこれまで抵抗があった政策にも再び言及。英字紙チャイナ・デイリーによると、政府系シンクタンクのエコノミスト3人が、政府は「少なくとも1兆元(1390億ドル)相当の追加的な消費喚起策を現金か商品券の形で検討すべきだ」との考えを示した。この金額は昨年のGDPの0.8%に相当する。
記事はこうした措置に関して「今年の財政赤字の対GDP比を引き上げるか、特別国債の追加発行の承認が必要」と指摘。清華大学の中国経済思想実践研究院の李稲葵所長は「10月の国慶節の週に商品券を発行することが望ましい」と述べた。
エコノミストの多くは、政府がこれまでこうした政策に抵抗してきたことから、実際の導入には懐疑的だ。政府はパンデミック時に企業への対応を優先し、消費者への直接的な支援は控えた。
ANZのストラテジストのXing Zhaopeng氏は、商品券の効果は一過性のもので、消費の持続的回復には不動産と株式の両市場の回復が不可欠だとみている。
世帯の不動産資産はピークの600兆元から20%ないし30%減少したと推定しているが、この落ち込み規模は中国の年間GDPに匹敵するという。
同氏は「商品券が配布された月には消費が発生するだろうが、消費を持続的に活性化させるのは不動産と株価の回復だけだ」と、商品券の効果に懐疑的な見方を示した。
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