- 2024/01/24 掲載
中国、預金準備率0.5%引き下げ発表 21年以来の大幅引き下げ
[北京 24日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)の潘功勝総裁は24日、預金準備率を0.5%ポイント引き下げると発表した。2月5日から適用する。預金準備率の引き下げは今年初めて。全ての銀行が対象となる。
引き下げ幅は2021年12月以降で最大。大半の市場予想を上回った。
総裁は記者会見で、預金準備率の引き下げにより、1兆元(1394億5000万ドル)が市場に放出されると説明した。
エコノミスト・インテリジェンス・ユニットのシニアエコノミスト、Xu Tianchen氏は「人民銀行は先に、市場予想に反して中期貸出制度(MLF)金利の引き下げを見送ったが、今回の預金準備率引き下げは、人民銀行が今年いっぱい緩和的な金融スタンスを堅持するサインだ」と指摘。
「政府全体が、政策支援を前倒しして経済の好調なスタートを実現したいと考えているサインでもある。厳しい1年に野心的な成長目標を達成するには、それが必要だ」と述べた。
人民銀行が記者会見で預金準備率の引き下げを発表するのは異例。通常は、業務時間外にウェブサイトに声明を掲載して発表することが多い。
人民銀行は昨年3月と9月に全ての銀行を対象に預金準備率を0.25%ポイント引き下げている。
預金準備率の引き下げ発表を受け、香港株式市場のハンセン指数は一段高となり、3.6%高で取引を終了した。本土の株式市場は発表前に取引を終了していた。
オンショア人民元も発表を受けて1月12日以来の高値となる1ドル=7.1601元まで上昇した。
会見した潘総裁は、さまざまな政策ツールを活用して流動性を妥当な程度に潤沢に維持し、信用構造を改善し、民間企業と小規模企業への支援を強化するとの方針を示した。
人民元相場を基本的に安定的に維持し、元の国際化を着実に進めるとも述べた。
また、1月25日から、地方と小規模企業向けの再貸出金利と再割引金利を0.25%ポイント引き下げることも明らかにした。
<追加対策が必要との声>
中国人力資源・社会保障省の雇用促進局幹部は24日、別の会見で「今年は雇用への圧力が弱まらないだろう。国内の雇用を安定させるにはさらなる取り組みが必要だ」とし、大卒者の雇用支援強化などを優先すると述べた。
ピンポイント・アセット・マネジメントのチーフエコノミスト、Zhiwei Zhang氏は「消費を重視したより積極的な財政スタンスの方が重要であり、効果的だ。中国はデフレ圧力に直面しており、投資よりも消費に財政資源を回すことが不可欠だ」と指摘。「生産能力の拡大ではなく、内需の拡大が必要だ」との見方を示した。
ステート・ストリートのEMEAマクロ戦略責任者、ティム・グラフ氏は「われわれはさらなる景気支援措置を予想しており、やや遅すぎるというのが第一印象だ。昨日も一部の刺激策が発表されており、当局は景気・市場支援策への関心を高めているようだ」と述べた。
その上で「まだ課題は残っており、銀行システムの問題は続いている。全くの予想外の措置ではなく、市場の見方を大きく変える万能薬でもない。より的を絞った刺激策が効果的だろうが、当局はそうした措置に消極的なようだ」と述べた。
中国経済は住宅市場の低迷、地方政府の債務リスク、外需の鈍化を背景に、新型コロナウイルス後の景気回復がもたついている。
これまで導入された一連の政策は効果が限定的で、追加の対策を求める声が強まっていた。
政府はデフレリスクの回避と失業抑制に向け、景気支援を目指しており、アナリストは追加の対策が今年必要になると分析している。
ただ、消費者ではなく生産者に供与される信用が増える中、デフレ圧力が強まり、金融政策の効果が低下する可能性があるとの指摘も出ている。
みずほ銀行のアジア通貨担当チーフストラテジスト、ケン・チュン氏は「預金準備率の引き下げは、それほど予想外ではなかった」とし「春節休暇前に株価を押し上げることが狙いだろう。人民銀行は他の支援措置も発表した」と指摘。
「預金準備率の引き下げにより、春節休暇前に必要な資金が放出される可能性がある。人民元への副作用はそれほど大きくないだろう」と述べた。
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