- 2024/01/24 掲載
アングル:中国を見限る国際投資家、当局の対策表明にも冷淡
[上海/ニューヨーク 23日 ロイター] - 中国経済がいずれ改善すると希望を抱き続けていたグローバルな投資家が、ついに中国を見限って投資を引き揚げ、株価の急落を招いている。
香港と上海の株式市場は22日に急落し、上海総合指数は2022年4月以来で最悪の下げを記録した。
中国国務院(内閣)が市場心理安定のために措置を講じると表明したことなどから、23日には売りが収まったようだが、投資家が心を動かされたわけではない。
オールスプリング・グローバル・インベストメンツの新興市場ポートフォリオマネジャー、デリック・アーウィン氏は、「見限るような空気が流れている。もっと大きな危機が起こるまで、中国政府は必要とされる大きな対策ではなく、火にコップの水を注ぐような対応を続けるだけかもしれない」と語った。
今週の株価急落は、経済の方向性、特にゼロコロナ政策解除後の景気回復を妨げてきた不透明な規制変更に対するフラストレーションが頂点に達した形だ。
主要株価指数のCSI300指数は2021年2月のピークから47%、香港ハンセン指数は49%、それぞれ下落した。対照的に、日経平均株価と米S&P500種総合指数はそれぞれ24%上昇している。
上海と深センの株式時価総額は、2021年末から3兆ドルも減少した。
<求められる大規模対策>
ゴールドマン・サックスのアナリストチームは、中国株が悪材料をほぼ織り込んだとみている。ただ好転には時間がかかり、強力かつ包括的な金融緩和、景気刺激策、米中関係の改善、さらには住宅市場や株式市場における政府支援など、大規模な政策措置が必要だと記した。
24年にはこれまでと違う年になるという期待は、当局が健全で長期的な成長を追求して目先の不調は見過ごすと示唆したことで、早々に打ち砕かれた。
経済の大部分を支える不動産セクターへの支援も場当たり的だ。一方で中国共産党は、61兆ドル規模の金融業界や地方政府への監督を強化すると宣言している。
クロックタワー・グループのチーフストラテジスト、マルコ・パピック氏は、金融セクターへの強引な規制は今の中国には必要ないと指摘する。「危機の後には、銀行がアニマルスピリットを持ち、融資すべきだと感じる必要がある。つまり銀行を取り締まれば、景気回復を鈍化させてしまう」という。
今月は、待望の利下げも実行されなかった。パピック氏は「バズーカ砲からは程遠い。当局は水鉄砲さえ撃ちたがらない」と嘆く。
<ミクロ的投資>
投資家はインド、日本、その他の新興国市場に押し寄せているが、MSCI新興国市場指数をベンチマークにしている年金基金など海外資金の一部は依然として中国にとどまっている。同指数の中国株組み入れ比率は26%を超える。
数十本の上場投資信託(ETF)も中国株を保有している。
しかしUBPのグループ・チーフ・ストラテジスト、ノーマン・ビラミン氏によると、グローバル投資家にとって中国株は強制的に持たざるを得ないものから裁量的な投資先へと変わりつつある。
「過去30年間、中国は急成長して世界の製造業の中心になりつつある、というのが中国を巡るストーリーだった。経済が非常に好調だから、何も考えずに中国株を持つべきだ、というわけだ」とビラミン氏。しかし今はそうした「マクロ的な話」というより、中国の優良企業を数社所有するという「ミクロ的な話」に変わってきていると語った。
<バンドエイド>
ブルームバーグ・ニュースは、中国当局が約2兆元(2789億8000万ドル)を動員して株式安定化基金を設立する可能性があると報じたが、中国本土の投資家の反応は冷淡だ。上海総合指数は23日、心理的に重要な2800ポイントを割り込んで引けた。
パンヤオ・アセット・マネジメントのバイス・ジェネラル・マネージャー、サイモン・ユー氏は、「オオカミが来た」という叫びが繰り返されていると指摘。「救済基金に関する話はずっと前から渦巻いているが、未だに具体化していない」と切り捨てた。
中国のアナリストらは、昨年から救済基金の設立を求めてきた。
前例もある。15年の株価暴落の際には、投資家グループから成る「国家チーム」が設立された。チームの買いは株価を浮揚させたが、一時的に終わった。
ユー氏は、政府が毎年、数千億元相当の株式を購入すると宣言すれば、市場の信頼は回復する可能性があると言う。しかし「具体的なことが何もなく、漠然とした言い回しだけなら、投資家心理は悲観的なままだろう」
一方、シンガポールを拠点とするグラスホッパー・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ダニエル・タン氏は、提案されているファンドの規模は「問題の大きさに比べれば」小さいが、当局の戦略の変化を示唆しているのかもしれない」と指摘。「当面は様子見のアプローチを採りたい。相場が反転すれば上昇余地はたっぷりあるので、底値を拾いに行く気はない」と語った。
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