- 2024/01/22 掲載
アングル:米株が2年の曲折経て最高値更新 割高化懸念する声も
[ニューヨーク 19日 ロイター] - 米国株はこの2年間、物価高騰や地銀危機、経済の不透明感などで曲折をたどってきたが、19日にS&P総合500種が過去最高値を更新して取引を終えた。米連邦準備理事会(FRB)が今年利下げに動く一方、米経済は腰折れしないとの期待が背景にある。
S&P総合500種が今回最高値を更新したことで、2022年10月以降は強気相場が続いていることが確認された形だ。
22年の米国株は、物価の急上昇でFRBが利上げを迫られるとの懸念から不安定な値動きで始まり、結局一連の利上げサイクルは過去数十年でも屈指の引き締め度合いだったことが判明。米国債利回りが16年ぶりの高水準に跳ね上がり、株価を圧迫した。
このためS&P総合500種は一時高値から25%も下がり、22年10月に直近の底を記録した。しかしそれ以降、インフレがはっきりと鈍化してきたことを示す材料が出て、FRBからもハト派的なメッセージが発信されると、株価は反転。23年はS&P総合500種が年間で24%上昇し、今年序盤も総じて堅調となっている。
過去1年間の株高をけん引してきた巨大ハイテク銘柄の高騰と、人工知能(AI)に対する楽観的な見通しは、19日も健在だった。
この2年間の市場で重要な要素になっていたのは、株価と米国債の相互作用。FRBが利上げを開始すると利回りが上昇し、23年10月に16年ぶりの高水準に達した。米財政運営も巡る懸念も米国債売りに拍車をかけた。
逆に最近数カ月は、今年の利下げ観測が利回りを押し下げ、23年10月時点で5%を上回っていた10年債利回りは4.2%前後に落ち着いている。
もっとも足元では、FRBがどこまで積極的に利下げするか疑念が生じた結果、利回りは幾分上がってきた。
株価を動かしているもう一つの大事な要素は、これまでの利上げが功を奏してインフレが鈍化しつつも、経済成長はさほど痛手を受けないという、いわゆるソフトランディング到来への期待感だ。
今のところ米経済は底堅さを示し、小売売上高や消費者信頼感などはしっかりしている。他方で生産者物価などは減速基調となり、シティグループが算出しているエコノミック・サプライズ指数は今年初め、23年5月以降で初めて実際のデータが予想を下回ることを意味するマイナスに転じた。
プリンシパル・アセット・マネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジスト、シーマ・シャー氏は、金融政策運営の先行きに難しさがあるのは確かだが「FRBは景気後退を引き起こさずに物価上昇率を目標に戻せる確固としたチャンスを手にしている」と述べた。
23年の株高を引っ張ったのは、いわゆるマグニフィセント・セブンと呼ばれるアップル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、テスラ、アルファベット子会社グーグルの超巨大7銘柄で、その理由はS&P総合500種におけるウエートの大きさだ。
マグニフィセント・セブンの23年上昇率はそれぞれ約50%から240%、合計時価総額はS&P総合500種の28%前後に達し、23年の同指数の総リターンの3分の2近くをもたらした。
BofAのファンドマネジャー調査を見ると、マグニフィセント・セブンの保有について投資家が10カ月連続で最も「込み合った」取引をみなしたことが分かる。
これら7銘柄は今までの高騰で、他の米国株に対して割高化したとの指摘も出ている。予想利益に基づく株価収益率(PER)は、マグニフィセント・セブンが約33倍と、S&P総合500種全体の19.6倍よりずっと高い。
ブラックロックのストラテジストチームは最近のノートに「12月に市場全般にわたる値上がりがあった後でさえ、非常に大きな時価総額を持つごく一握りの巨大銘柄への(投資の)集中度はなお高水準だ」と記した。
バリュエーション問題は、米国株全体にとってもこの先足かせになるかもしれない。
LSEGデータストリームのデータによると、足元の20倍弱というS&P総合500種のPERは、過去平均の15.6倍を大きく上回っている。
ノースウエスタン・ミューチュアル・ウエルス・マネジメント・カンパニーのブレット・シュッテ最高投資責任者は「昨年は、企業業績の予想比上振れと市場リターンのハードルは低かったが、今年は最初からこうしたバリュエーションが前提になっているので、ハードルが高くなっている」と指摘した。
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