- 2024/01/05 掲載
ドル建て債発行、今年は増加の見方広がる アジア太平洋地域
[シドニー 4日 ロイター] - 2024年の日本を含めたアジア太平洋地域のドル建て債券発行額を巡り、前年比10%増になるとの見方が金融機関など発行関係者の間で広がっている。金利が安定し企業が設備投資向け資金の借り入れを強化することが要因だ。
調査会社ディールロジックのデータによると、前年の発行総額は計2720億ドルにとどまり、15年以来、8年ぶりの低水準だった。
今年はドル建て債券の発行が増加するとの見通しの背景には、各種の景気指標でインフレが制御可能な状況になり始めたことが示され、今年は米連邦準備理事会(FRB)が利下げに着手するとの見通しが強まったことがある。
バンク・オブ・アメリカでアジア太平洋地域の債券資本市場(DCM)シンジケート部門を率いるジョセフ・ペッピング氏は「米利上げサイクルがピークに達し、誰もが心地よい状況だ」などと指摘し、ドル建て債券の発行額が今年は前年比で約10%増えるとの期待を示した。
モルガン・スタンレーのアジア太平洋地域デットシンジケート事業を統括するエレイン・ヘ氏は「米利下げの場合、アジアの自国通貨建て債券と外貨建て債券の資金調達コストの差が縮小し、ドル建て債券での資金調達活動を後押しするだろう」と述べた。
UBSでアジア債券資本市場の共同責任者を務めるテリー・シュマスマン氏は、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)のサプライチェーンに関わるアジア企業を中心に、事業拡大に向けた資金確保のため債券を発行する必要があるはずだと述べ、「今年は外貨建て債券発行の仕事がもっと忙しくなると期待している」などと話した。
直近の発行を巡る状況では、韓国半導体大手SKハイニックスや鉄鋼大手ポスコなどアジア最大の企業数社が年明け直後の数日間にドル調達に向けて一気に動き出した。取引状況を直接知る複数の関係者によると、韓国の同2社の発行希望は計20億ドルの規模に及ぶという。
また、ロイターがインドネシア政府による債券発行募集要項(タームシート)で確認したところ、同政府は年初に3つのトランシェによるドル建て債券(20億5000万ドル)を発行済みだ。
アジアの経済大国、中国の不動産セクターはかつてドル建て債券市場で積極的に発行していていたものの、事業環境が依然困難で、高利回りドル建て債券の発行は控えられたまま。モルガン・スタンレーのヘ氏は「中国経済の規模を考慮すると24年は高利回りの(ドル建て債券)発行が増えると期待される」と述べた。
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