- 2024/01/05 掲載
アングル:米企業収益、今年は一段と改善の期待 景気先行き巡る懸念が影
[ニューヨーク 2日 ロイター] - 今年の米企業収益は、インフレの落ち着きや金利低下に伴って一段と改善すると期待されているが、景気の先行きを巡る懸念がそうした見通しに影を落としている。
LSEGがまとめた市場予想によると、S&P総合500種企業の今年の増益率は11.1%と、2023年見込みの3.1%から加速する。
気がかりなのは株価が割高になっている点だ。S&P総合500種の12カ月予想利益に基づく株価収益率(PER)は19.8倍で、長期平均の15.6倍よりもずっと高い。
ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのシニア・グローバル市場ストラテジスト、サミア・サマナ氏は、現在の株価水準からは企業収益の力強い伸びが求められていると指摘。今年の不安要素として、これまでの金利上昇が実体経済と企業収益に及ぼしてきた影響の余波が残ることを挙げた。
LSEGのデータを見ると、23年第4・四半期のS&P総合500種企業の増益率見込みは10月1日段階の11%から5.2%に、今年第1・四半期の予想も9.6%から7.4%まで切り下がっている。
1月半ば以降、各企業が23年第4・四半期業績を実際に発表する時期になれば、見通しがさらに弱含む恐れもある。
ジ・アーニングス・スカウトのニック・ライク氏は「(第1・四半期の)予想がより急速に下振れするのは間違いない。フェデックスなどの銘柄に目を向ければ、世界経済の適切な先行指標にできる」と述べた。
フェデックスが12月19日に発表した8─11月期利益はアナリスト予想に届かず、通期売上高見通しも引き下げたため、翌日に株価は12.1%も急落した。
一方で市場関係者は(1)物価上昇率の鈍化(2)ハイテク株に対して出遅れていた他の銘柄の業績回復(3)米連邦準備理事会(FRB)のハト派姿勢への転換によるドル下落がもたらす輸出競争力向上──などが米企業全体の収益環境にとってプラスに働くと主張している。
ただ楽観論の前提となる米経済のソフトランディングが確実に実現するかどうかはまだ分からない。
JPモルガンの株式ストラテジストチームは、現在のS&P総合500種の収益に関する市場のコンセンサスはいわゆるゴルディロックス(適温経済)シナリオに符合していると分析。「市場はインフレが需要と購買力に著しい痛手を与えない形でクールダウンするという完璧に近いソフトランディングを想定しており、われわれの考えではそうなる確率は乏しい」と警告した。
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