- 2023/12/22 掲載
焦点:2024年のドル安観測強まる、FRBがハト派転換 鍵握る米経済動向
[ニューヨーク 20日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)がハト派姿勢に転じたことで、来年はドル安が続くとの観測が強まってきた。ただ米経済の堅調さが、ドル売りを限定的にとどめてもおかしくない。
FRBのパウエル議長は13日、歴史的な金融引き締め局面は終わった公算が大きいとの見解を表明。連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーは来年中に計75ベーシスポイント(bp)の利下げを想定していることが分かった。
ストラテジストの間では既に来年はドルが弱含むとの予想が広がっていたものの、利下げペースが速まればドル安が加速する恐れがある。
ソシエテ・ジェネラルのチーフFXストラテジスト、キット・ジャックス氏は、これまではFRBの強烈な引き締め政策と米成長てこ入れのためのコロナ禍後の諸政策が相まって、1980年代以降で一番力強いドルの上昇をもたらしてきたが、金融緩和が見込まれるのに伴って、そうした値上がりの一部は巻き戻されるはずだと指摘した。
もっとも近年は、安易にドル安に賭ける危険性が証明されており、一部投資家は拙速な決めつけを警戒。米国の経済状況が他国を上回り続けることが、ドル弱気派にとって逆風の一つとなるかもしれない。
<成長格差>
今月初めにロイターがストラテジスト71人を対象に行った調査では、ドルは来年G10通貨に対して下落し、値下がりの大半が年後半に集中するとの見方が示された。
このような予想が正しいかどうかは、来年の米経済が他国・地域と比べてどのように推移するのか、また主要中銀がどんなペースで政策調整を進めるのかに左右されるのではないか。
ニューバーガー・バーマンのシニア・ポートフォリオマネジャー、サノス・バーダス氏は、米国以外では成長鈍化がより定着していると述べ、向こう1年のドルに強気の立場。「米国の場合、成長が減速するまでしばらく時間がある」という。
しかしアムンディUSの債券・通貨戦略ディレクター、パレシュ・ウパダヤ氏は、中国とインドの成長について市場は悲観的になり過ぎていると分析。両国の成長が伸びれば原材料需要が拡大し、豪ドルやニュージーランドドル、カナダドルといった資源通貨にプラスとなる可能性があると付け加えた。
ブランディワイン・グローバルのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は、米国の成長鈍化と中国の成長加速を予想し、ドルを売ってアジア通貨に投資している。同氏は「ドル強気相場は爛熟期に入っている」と話した。
当然ながらドルの軌道は、FRBの政策と米国の物価上昇率が本当に市場予想通りに展開するかどうかにもかかっている。金利先物が織り込んでいる来年のFRBの利下げ幅は140bp余りと、FOMCメンバーによる想定の2倍近くに膨らんでいるからだ。
ストーンXの市場調査責任者マット・ウェラー氏は「物価上昇率の減速が続かなければ、FRBが利下げを控える確率が高まる。それはドルにとって強気の環境となるのは間違いない」と語った。
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