- 2023/12/16 掲載
アングル:英国でクリスマスの贈り物にチョコ人気、苦しい懐事情反映
[ロンドン 11日 ロイター] - ホリデーシーズンを迎えた英国で、チョコレート「クオリティストリート」を製造するスイスの食品大手ネスレと、キャドバリーを傘下に収める同大手モンデリーズ・インターナショナル の製菓部門の売上が好調だ。家計の苦しくなった消費者が、低価格のギフトを志向しているためという。
アナリストや消費財関連企業によれば、今年はインフレや住宅ローン金利の上昇に苦しむ買い物客が、これまでより安いギフト商品を購入しているという。玩具や最新のデバイスには背を向け、この1年で値上がりしたとはいえ相対的には安上がりなチョコレートを選んでいる、と業界幹部は言う。
ネスレの英国アイルランド事業部で顧客カテゴリー主任マネジャーを務めるフラン・マッカーゴ氏は8─11月の前年比実績について、「特に出足が好調なのが箱入りチョコレートで、販売額ベースで前年比8.7%増になっている」と述べた。
また個包装チョコレートの売上高は、2.1%の伸びで、ネスレとしては、クリスマスプレゼントとしてチョコレートを購入する消費者が増えていると同氏は説明する。
購入者がそうした商品に支出する額は、通常10ポンド(約1800円)以下で、人気を集めているのは、ネスレの缶入り「クオリティストリート」(1缶5ポンド)やモンデリーズの「キャドバリー」特製ボックス(1箱1.5ポンド)だという。
これに対して、市場調査会社サカーナ(旧NPD)によれば、欧州における玩具の平均販売価格は約13ポンド。複数の玩具メーカーは今月初め、今年は需要が減少しているとロイターに語った。
介護施設職員のボニー・ジョンソンさん(42)は、「チョコレートなら手ごろな価格だ。玩具やその他のギフト商品は値上がりしたが、チョコレートは上がっていない」と話す。「ギフトとしては安上がりで、かなりたくさんの人に贈ることができる」
英スーパーマーケット大手セインズベリーやテスコといった小売企業は、会員カードを持つ顧客に対して、「クオリティストリート」や「セレブレーションズ」を割引価格で提供している。
クリスマス商戦で例年販売好調なネスレ傘下のブランドとしては、この他に「キットカットサンタ」(1ポンド強)や「ミルキーバー・フェスティブフレンズ」(1.25ポンド)がある。
<プレミアム製品で利益率も改善>
またメーカー各社は、今年46年ぶりの高値となったカカオ豆高騰の影響を緩和するため、販売価格を高めに設定できる「プレミアム」志向を強めた高級チョコレート製品を登場させている。
資産運用会社ボントベルのアナリスト、ジャンフィリップ・バーツキー氏は、「(プレミアム製品は)第4四半期の収益に貢献するだろう。チョコレートメーカーにとってクリスマス商戦は最大の書き入れ時だ」と語る。
ネスレでは、2022年に17.1%だった営業利益率は、今年17─17.5%になると予想している。
ネスレの最新の年次報告書によれば、製菓部門の年間売上高は約81億スイスフラン(1兆3459億円)。昨年のグループ全体での売上高は944億スイスフランだった。
調査会社ユーロモニター・インターナショナルによると、世界のチョコレート市場の規模は1235億ドル(約18兆円)。この市場が年間で最も活況を呈するのがクリスマス商戦の時期だ。
モンデリーズで営業広報担当マネジャーを務めるスーザン・ナッシュ氏は、比較的安価な嗜好(しこう)品は、ヤングアダルト層のあいだで特に人気だという。
米コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーはが実施した調査では、今年のクリスマス商戦では、英国のZ世代消費者の90%、ミレニアル世代消費者の83%が、これまでより低価格な商品にシフトするつもりだと答えている。全年代では、回答者の73%がこれまでより低価格のギフト商品を買うつもりだとしている。
医師のエビー・バーンさん(29)さんは、クリスマスに友人たちと楽しむプレゼント交換会の予算を、昨年の20ポンドから今年は10ポンドに引き下げるという。
バーンさんは、ロンドン南東部キャンバーウェルのスーパー「モリソンズ」で買い物をしながら、「私たちは知らず知らずのうちに、いろいろ少しずつスケールダウンしているのかも知れない」と話す。
英国では缶入り高級チョコレートを贈ることがクリスマスのお祝いの1つになっており、サーカナによれば、国内の贈答用チョコレート市場の規模は約18億ポンドに達しているという。価格の上昇を背景に、この1年で市場規模は7%膨らんだ。
やはりサカーナのデータによれば、英国の玩具市場の規模は約20億ポンドで、今年は4%近く縮小した。
クリスマスが過ぎれば、来年に向けてチョコレートメーカーが販売条件の悪化に直面することが予想される。各ブランドがカカオ高騰の価格転嫁を試みるからだ。とはいえ業界幹部らは、それでも他の裁量消費に比べれば、チョコレート需要は持ちこたえるだろうと話している。
「懐事情が厳しくなると、消費者は可処分所得を何に使うか見直す。とはいえ、贈答用の菓子類への支出が削られてしまう可能性は低い」とナッシュ氏は言う。
(翻訳:エァクレーレン)
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