- 2023/12/12 掲載
長期金利は24年末に1.25%、日本国債買い視野に=アムンディ最高投資責任者
[東京 12日 ロイター] - 欧州の資産運用大手アムンディでグループ最高投資責任者(CIO)を務めるヴァンサン・モルティエ氏は、ロイターとのインタビューで、現在は日本国債に弱気で投資を行っていないが、円金利は今後緩やかに上昇し、来年末には10年金利が1.25%と買いが視野に入る水準に上昇するとの見方を示した。また日本株には強気の投資判断を示した。
アムンディはパリに本拠を置く世界的な資産運用会社で、9月末時点の運用資産残高は1.97兆ユーロ(約315兆円)。インタビューは11日にオンラインで実施した。主なやり取りは以下の通り。
──日本国債に対する投資判断は。
「日本国債へのスタンスはアンダーウェイト(弱気)で、現時点では投資はしていないが、円金利についてはいずれの年限も今後緩やかに上昇すると予想する。新発10年国債利回り(長期金利)は10年ぐらいかけてゆっくり上昇(国債価格は下落)するとみており、今投資するのは得策でないとの判断だ」
「10年金利は2024年末には1.25%に上昇すると予想している。長期金利は緩やかな上昇を続けた結果、7─8年後には2%近辺に到達するだろう」
「実際に日本国債に投資できるかどうかは、その時点の欧米国債と利回りを相対比較しての判断だが、そうなる可能性はある。現時点では利回りが低過ぎるため投資対象にはならないが、来年後半に金利が1.25%まで上昇してくれば、日本国債への投資が正当化される状況となり得る」
──日銀の金融政策に関するメインシナリオは。
「24年半ば、6月の金融政策決定会合でマイナス金利を解除してゼロ金利に移行すると予想する。ゼロ金利を経て、プラス圏への引き上げも0.1%刻みで段階的に、欧米の利上げと比べて非常にゆっくりしたペースとなるだろう。そのため日本市場にショックを与えることにはならない。政策金利は25年末時点で0.5%に引き上げられると予想している」
──市場では、早ければ12月や1月に日銀が正常化に動くとの観測もあるが。
「日銀は景気サイクルを中断しないよう、慎重を期すはずだ。6月会合まで大きなアナウンスメントはないだろう」
「6月にマイナス金利を解除しても、イールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)は撤廃せず、枠組みを維持するとみている。(日銀が今年10月に)YCCの運用を柔軟化して長期金利の変動幅上限の1%を『目途』に変えたことは非常にうまいやり方だった。1%は目途であり上限ではないため、10年金利が1.25%に上昇しても日銀は問題視しないだろう。1%の目途について微修正はあり得るが、撤廃はないと思う」
──日銀が政策正常化に動くことの市場への影響、また投資判断への影響は。
「政策金利がゼロになっても、プラス0.1%に引き上げられても、あくまで正常化するだけの小さな動きで、10年金利への影響は軽微だろう」
「10年金利は日銀の決定によらず、年間を通して緩やかな右肩上がりで上昇基調をたどるとの想定だ」
──日本株に対する投資判断は。
「世界株式のポートフォリオでは、米国をアンダーウェイト(弱気)、日本株はオーバーウェイト(強気)にしている。ただ、日本株全てに強気ではなく、選択的な姿勢で投資を行っている」
「日本株はインデックスで見るとかなり高値圏にあるが、生活必需品や一般消費財といった内需セクターには投資妙味がある。名前の知られた超大型株は避け、内需セクターの、とりわけ日経平均構成銘柄ではない企業を選好している。中小型株にはまだ割安感がある」
「一方、大型輸出株には慎重な見方をしている。為替は今後円高が進むと予想しているためだ。また、われわれが日本株に強気に転じた1年ほど前は為替ヘッジをつけて投資していたが、数カ月前の夏ごろからはヘッジ無しでの投資に切り替えている」
──為替の見通しについて。
「当社が考えるフェアバリューは1ドル=120円。当面はその水準が実現するとはみていないが、24年末時点で130円への円高進行を想定している」
「各中銀の金融政策により日米金利差が今後縮小する見込みであることに加えて、円には金融不安やストレスなどが起きる局面で買われやすい特性がある。来年は米国が景気後退入りするリスクも意識されており、われわれは円が今の水準から少なくとも10%は強含むと考えている。ドル/円は1カ月前につけた152円近辺からは6%ほど下落したが、依然として円は異常なくらいに割安だ」
(植竹知子 編集:久保信博)
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