- 2023/12/08 掲載
アングル:米欧で小型株上昇、割安感が魅力 景気後退で警戒の声も
[ロンドン/ニューヨーク 7日 ロイター] - 米欧の株式市場で今年出遅れていた小型株が値上がりしている。投資家は来年の利下げ期待と景気後退リスクを天秤にかけているようだ。
小型株で構成する米ラッセル2000指数は10月の安値から13%以上上昇。MSCI欧州中小型株指数も11後半から12%値上がりしている。
小型株は今年、大半の期間で低迷していた。S&P総合500指数は年初から19%上昇しているが、ラッセル2000の年初来上昇率は5%。欧州でもMSCI欧州株指数は年初から12%値上がりしているが、小型株は6%強の上昇にとどまっている。
このため、小型株は大型株に比べて割安感が出ている。LSEGデータストリームによると、米国では大型株に対する小型株の相対価格が過去最低付近で推移。S&P小型株600指数は株価予想収益率(予想PER)が13.7倍と、長期平均の18倍を下回っている。S&P総合500指数の予想PERは現在19倍だ。
欧州の小型株の予想PERも12.2倍で、15年間平均の15倍を下回っている。MSCI欧州株指数の予想PERは現在、12.3倍。
ジャナス・ヘンダーソンの欧州株チームのポートフォリオマネジャー、ローリー・ストークス氏は「小型株は2年半近く、相対的に株価が低迷しており、現時点で極めて割安だ」と指摘した。
市場は米連邦準備理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)が来年125ベーシスポイント(bp)以上の利下げを実施すると予想しており、こうした利下げが小型株の支援材料になるとの見方が出ている。
中小企業は短期債務への依存度が高い傾向にあり、借り入れコストが上昇すれば、相対的に大きなダメージを受ける可能性がある。
クレセット・キャピタルのジャック・アブリン最高投資責任者(CIO)は、最近の米国債利回り低下で多くの小型株の「縛りが緩んだ」と指摘する。
モーニングスター・ウエルスが1970年代以降のデータを分析したところ、米国では経済成長が加速しインフレが鈍化する局面では小型株のパフォーマンスが大型株を上回っており、上昇幅は年率でラッセル2000指数が25.2%、S&P500指数が17.3%だった。
小型株は業績の回復も見込まれている。LSEGのデータによると、ラッセル2000指数採用企業は今年11.5%の減益となる見通しだが、来年は約30%の増益が予想されている。
最近高騰した小型株では、ワイヤレススピーカーのソノスが過去1カ月で40%以上上昇。衣料のビクトリア・シークレットも過去1カ月で33%値上がりしている。
ただ、警戒も必要だ。足元ではソフトランディング期待が株価の下支え要因となっているが、一部の投資家はこれまでの利上げが景気後退を招くと懸念している。
景気後退局面では、小型株が不釣り合いな悪影響を受ける傾向がある。ストラテガスのデータによると、1980年以降の平均では景気がピークを越えた後の6カ月間、ラッセル2000指数のパフォーマンスはS&P500指数を平均4%ポイント下回っている。
ナティクシスIMのグローバル市場戦略責任者、マブルック・チェトゥアン氏は、年末の取引高減少、景気後退懸念、利下げ検討は尚早という中央銀行の主張を踏まえると、小型株への投資を避けるべきだと主張。「ネガティブショックが起きれば、流動性の低い市場セグメントでボラティリティーが高まるだろう。戦術的な観点では、小型株を買ったり買い増したりする時期ではない」と述べた。
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